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東方体験録

どうもカムケンですm(_ _)m

かなり前に書いた東方の小説を何となくUPしたくなりました( ̄∀ ̄) 絵師ばかりではなく、小説家の自分も小説をUPしないとなと思ったり(^_^;)

しっぽ漬、初の東方小説であり、幻想入り小説になんじゃないかとかと思います(^_^;)










東方体験録「幻想郷物語」






 第一章 夢は幻想郷?


 幻想郷……それは妖怪と人間が暮らす結界で隔離された世界……世界といっても別の異次元というものではなく、同じ空間に存在する陸続きの世界。
 外の世界とは異なる精神・魔法中心の独自の文明が築き上げられ、そこでは「異変」と呼ばれる怪事件や不可解な現象を博麗神社の巫女、博麗霊夢が事件を解決していく物語が展開されている……
 もちろんそれは同人のSTGゲーム、東方のお話であり……幻想卿があるとは思っていない……
 憧れはあるものの……それが現実になるとは夢にも思わなかった。
 パソコンのモニターを前にいいじ飯井地 しゅうた秀太は眠そうに結ったちょんまげのような髪をゆらゆらと揺らす。
 プリンターの上に置いてある時計の針は既に深夜の二時を過ぎようとしていた。
 手に持っていたUSBに繋いだコントローラが秀太の手から落ち、目をつぶりかけた時、バイブの振動音と共にU.N.彼女なのか? の着信メロディが流れ出す。
 パソコンの台で揺れる携帯電話を秀太は嫌そうに手に取り、通話ボタンを押す。
「現在……STGの特訓中です……ご用の方は幻想卿にお越しください」
『なんだ秀太……お前、もえだんやってるのかよ?』
 声は自称、ルナシューターの友達の裕二だった。
「……ん? 何で分かったんだよ?」
『だって音、丸聞えじゃん……そのやる気の無いオーエンBGM』
 秀太は今さらながらイヤホンを付けたままの状態で電話をしていたのに気づく。
「日々の鍛錬は欠かさずやらないとな」
『そんなこと言ってまだイージーの神奈子様がクリアできないんだろ』
「ううっ……いや、確かにクリアできないけど……これから高得点狙ってクリアしてやる!」
『マジかよ……さすが名前だけにイージーシューターなのな』
 溜息をつくような声が聞こえ、思わず声を上げる秀太。
「うるさい! 俺だってそんな名前で生まれたくはなかったし……せめて腕だけでもノーマルーシューターにはなりたかったさ!」
『その実力じゃフラン、紫はおろか……ケロちゃんも拝めないだろうな……かわいそうに……あの弾幕は凄かったぜ……特にあの……』
 長くなりそうだったので、携帯電話の電源を長押しでそのまま切る。
 東方をやり始めたのはいつだっただろうか? 最初は同人誌や映像のMADに触れた事がキッカケだったと思う。その世界観や魅力あるキャラクター達にどっぷりはまった。
 そして原作の東方をプレイして本筋の物語に触れたいと思っていたのだが……自分のSTGの才能の無さに落胆する事になるとは夢に思わなかった。
「はあ~教えてくれフランドール先生……STGが上手くなれる方法を……」
(その実力じゃフラン、紫はおろか……ケロちゃんも拝めないだろうな)
 裕二の言葉が心に突き刺さるようだった。実際に東方シリーズの何をやっても何度も挑戦してもイージーすらクリアできなかった。
「いや、俺の場合、幻想郷に行った方が速いのかもしれないな」
「それじゃあ、私が幻想郷の世界に連れて行ってあげるよ」
 何処からか声が聞えたかと思うと、モニターからもえだんのフランドール先生が飛び出して、目の前に顔を近づける。
「えっ? これは幻?」
 眠いせいだろうか? 3D立体映像を見てるかのようにフランドールの身体の半分がモニターから突き出ていた。
「嫌だな秀太君……私が幻なはずないじゃないですか」
「じ、じゃあ、何だよゴーストか!?」
 フランドールがキスするぐらいの勢いでずいと迫ってきて、思わず仰け反ってしまう。
「私はフランドール・スカーレット……秀太君をいつも見てました」
 どうやらいく所までいったらしい……こんな白昼夢まで見るようになってしまったらしい。
「そのフランドール先生が俺に何の用なんだ?」
「幻想郷の世界に行ってみたいと言っていたよね? という訳で私と一緒に幻想郷の世界へ行ってみない?」
「幻想郷の世界に……でも、俺は普通の人間だから弾幕は撃てねえよ」
 確かに幻想郷の世界は憧れてはいる……しかし、この夢のフランドール先生がデフォだとすると、他のキャラクターがとんでもない方向にいっていそうで恐い気がする。何しろこのもえだんのフランドールは原作の性格と逸脱しているのだ。
「大丈夫、そんな秀太君のためにスペルカードを何枚か用意したの……これなら恐いものナシのはずだよ」
 そういえばこれは夢なのだ。夢なら多少は無理しても大丈夫そうだし、強いスペルカードを思い浮かべれば恐い思いをしなくても良いかもしれない。
「行ってみたいとは思うけど……そう簡単に行けるのか?」
「大丈夫だよ……パソコンのモニターに顔を近づけてみて」
 言われるままに顔を近づけてみると、フランドールの両腕が秀太の首をがっちりと抱き寄せる。
「へっ!?」
「幻想郷へいらっしゃ~い」
 フランドールがそのままモニターへと引き寄せると、髪の一部が沈んでいくのが分かった。
「なぜに桂三枝風? ちょっと待て!? 心の準備が!?」
 そう言うも、既に遅かった。秀太の身体は一瞬にしてモニターの中へと引きずり込まれていた。



 何だろうこの感覚……?
 木々の匂いにそれに背中にはさらさらとした肌触り……それに何処からか聞き覚えのない鳥のさえずり声とセミの鳴き声が聞こえる……これはまるで……森の中……?
「……そんな馬鹿な!?」
 目を開けて起き上がると、樹木に囲まれているのが分かった。そしてサラサラした肌触りの感覚は草むらに寝ていたからのようだ。
 そして不思議な事に深夜だったはずの外が、朝のような木漏れ日が差し込んでくる。しかし、こんな状況だとすれば未だに夢の中らしい。
「フランドール先生?」
 周囲を見回してみるが、森の奥深くらしく、まったくといっていいほど人の気配が無い。
「フランドール先生!」
 今度は声を上げてみる。
 声が反響して返ってくるが、しばらくしても誰の返事もない。
「まいったな……フランドール先生が居ないと、ここが何処だか分からない」
「誰かと思ったら人間じゃない」
 人気の無いはずの何処からか子供のような声が聞えるが、周囲を見回しても人のシルエットさえ見つからない。
「誰かいるのか?」
「バーカ……上だよ」
 頭上から声がして見上げると、可愛らしいの女の子が宙に浮いているのが見えた。青い髪に青のリボン、青白のワンピース、そして背中には氷の羽がひらひらと動いている。
 この容姿には見覚えがあった。
「おおっ!? お前、チルノだろ……まさかこんな所でチルノに会えるなんて思わなかったな」
 さすがに夢というべきか……今度はフランドール先生とは違い、願い通りに再限度の高いチルノのように思える。
「なんであたいの名前を知ってるのよ?」
「なんでって……そりゃあ、⑨で有名だしな」
「⑨? あたいが最強って言う意味?」
 目を輝かせて言うチルノに笑いが堪えられずにクスクスと声を上げてしまう。
「人間! あたいを馬鹿にしてるだろ!」
 両腕を振り下ろし、怒りを露にして睨むチルノ。周りの温度がまるで急激に下がったような感じがする。
「いや、そ、そんなつもりじゃない!?」
 チルノの手のひらに氷の粒が浮かび上がる。いくらチルノとはいえ、平凡な人間の自分では逃げる事もできずに氷漬けにされてしまうかもしれない。
 退く秀太にチルノが余裕の笑みを浮かべる。
「ふ~ん……あんた弾幕が撃てない人間なんだ……人間、あたいの子分になれよ……そしたら許してやるよ」
 手のひらの氷が除々に大きくなっていくのが見える。恐らくは断ったら瞬時に氷漬けにされてしまうだろう。
「子分になる……ただし、こちらにも条件がある」
「条件?」
「実は博麗神社に行く途中、迷ってたんだ……案内してくれれば子分になるよ」
 本当は行くアテがなかったが、ここが東方の夢の世界なら設定通りに博麗神社があって、人間の味方である霊夢が力になってくれるはずだ。このままチルノの子分になってもろくな事がなさそうだ。
「人間のくせにあたいをコキ使う気?」
「ギブアンドテイクだ……そちらの条件を飲む変わりにこっちの願いを聞いてくれ」
「ギブアンドテイク?」
 チルノが睨んだかと思うと、手のひらの氷をこちらに向けた。
 この瞬間、氷漬けになる事を覚悟したが……氷の粒が弾けて消える。
「……チルノ?」
「人間、最強のあたいに付いて行けばパーペキよ」
 やっぱりチルノは単純だ……疑わないでこの程度の交渉に乗るとは……
「ありがとう……助かったよ」
 上機嫌で前を飛ぶチルノ。弱いだけに子分ができるのが嬉しいのだろう。
「あたいの名前はチルノって、知ってるか……あんたの名前は?」
 やっぱり聞かれるとは思っていたが……よりによってチルノに……
「それは博麗神社に着いてからな」
「あたいの子分になるのに何で教えられないんだよ!」
「……飯井地秀太だ!」
 予想通りにクスリと笑うチルノに少し腹立たしい。
「イージーシューター……何だ弾幕撃てるじゃん」
 チルノの目つきが急に変わる。
「チルノ……なに言ってるんだよ」
「イージーシューター……弱い弾幕が撃てる程度の能力なんだろ? だったらあたいと弾幕勝負するのよ!」
「違う! 飯井地秀太だ!」
「やっぱりイージーシューターなんだ……あたいを騙そうたってそうはいかないよ!」
 弾幕を撃てる人間だと勘違いしているのか、⑨だけに融通がきかない。
チルノがカードのような物を取り出す。この夢の世界が東方ならチルノが出したカードは……
「やめてくれ! 俺は弾幕が撃てない人間だ!」
 そう言うも、秀太の声はチルノには届かなかった。
「凍符! パーフェクトフリーズ!」
 カードを掲げた瞬間、チルノの周囲に氷柱が発生する。
「なっ!?」
 秀太が咄嗟にかがむと、残像を残して氷柱が頭上を通り過ぎていくのが分かった。
「次は外さない!」
 振り向くと、後ろにあった樹木が氷漬けになっている。
「くそ!?」
 秀太が駆け上がった瞬間だった。氷柱が周囲の木や岩が一瞬にして氷漬けになる。
「うきーっ! 逃げるな!」
 相手はチルノだからそう簡単には当たらないとは思うが、蛙のように氷漬けにされるのは時間の問題だ。
「フランドール先生!」
 これが夢ならフランドール先生が近くに居てくれたりするのだろうか……
 何処からか翼を羽ばたかせる音が聞えてくる。期待を胸に秀太は振り向くが……すぐに秀太の表情が恐怖で青ざめていく。
「チルノ、良い獲物を追ってるじゃないの」
 小さな翼の付いた帽子を被り、長く尖った耳、背中に鳥の翼を羽ばたかせる少女。これが東方の夢の世界ならこの容姿は夜雀のミスティア・ローレライ……そしてさらに二つの影がチルノの横に付く……
「おっ!? 外見からすると、久しぶりの外からの人間か」
 喋ったのは頭には虫の触覚、黒いマントにボーイッシュな容姿は蛍の妖怪リグル・ナイトバグ。
「わはー、久しぶりの外からの人間なのね」
赤い眼に黄色い髪に赤いリボン、幼い少女に見えるものの、人喰い妖怪と知られる宵闇のルーミア。
「まさかこうも妖怪が集まるなんて!?」
「秀太君、呼んだ?」
 頭上から声が聞えて見上げると、上空を飛んでいるフランドール先生の姿が見える。
「今まで何処に居たんだよ!?」
「いくら呼んでも叩いても起きてくれなかったから……眠気覚ましの薬草を取ってきたの」
 フランドール先生が目の前に漂うと、笑顔で緑の草を見せる。
「眠気覚ましって普通……眠くなる前の対策なんじゃ」
「じゃあ、今が一番良いですね……これははっか薄荷と言って目ざめ草とも言われているの」
「状況を見てくれ!」
 フランドールが後ろを向くと、本当に今しがたに気づいたのか、驚いたように口を開ける。
「大変!? いつの間にこんなに妖怪が集まっていたの!?」
 このフランドール先生……本当に大丈夫なのだろうか? 
「フランドール先生、レーヴァティンとか使えないのかよ」
「ごめんね……この世界では力がふるえなかったりして……とりあえず私にできる事があるとすればスペルカードを渡すぐらいなの」
「俺は只の人間だぜ」
「秀太君、自分の力を信じて……ここでやられたら何のために幻想卿に連れてきたか分からないよ」
 本当に何のために連れて来たんだ? まさか自分を妖怪に喰わせるために……
 喋って逃げてるせいもあってか、息が上がってペースが落ちてきた。チルノ達の距離は二十メートルもない。
 訳の分からない夢だ……勝手に連れて来てそれは無い……だけど、夢であってもゲームであっても負けるのは嫌だ!
「分かったよフランドール先生! スペルカードをくれ!」
「これが秀太君のスペルカードよ! 受け取って!」
 フランドールの目の前に赤い光を放つカードが現れたかと思うと、それを手に取り、秀太へと投げる。
 スペルカードをキャッチすると、不思議とその名前が浮かんでくる。
「スペルカード! 空符……スカ?」
 カードを掲げた瞬間だった。チルノ達が放つ弾幕がむなしく通り過ぎて数本の髪が巻き込まれてはらりと地面へと落ちる。
 掲げたカードを見ると、絵柄には白地に黒でスカと書かれていた。
「秀太君、ナイスグレイズです」
 笑顔で親指を立てるフランドール先生に対して殺意が芽生えずにはいられない。
「何だよこれは!?」
「こういう事もたまにはあるよ……落ち込まずにいこうね」
 無数の弾幕が飛んできて、避けながら踵を返す。
 一度、止まったせいもあってか、チルノ達の距離がだいぶ縮まった気がする。
「他にスペルカードは無いのか! 何でスカなんだ!」
「多分、それはあなたがこの幻想卿を夢だと思い込んでいるから……秀太君がこの世界を認めない限り……スペルカードは発動しないよ」
「これは夢の世界じゃ……? 分かった……次のスペルカードをくれ!」
「これが秀太君の新しいスペルカードだよ」
 再びフランドール先生から赤い光を放つカードが現れ、それを秀太へと投げ渡す。
 フランドール先生が言った言葉……この世界を現実だと思えば良いという事なのだろうか? 
「秘技! スペルカード投げ!」
 秀太がそのカードを掲げると、くるくると回転しながら向かっていく。
「スペルカードが使えるなんて聞いてない……まるで博麗アミュレット!?」
 リグルは避けるも、くるくると回るカードは後ろにいるミスティアの額へと当たる。
「うわあああっ!? と思ったら……何ともないじゃないの」
 秀太から飛んだカードがミスティアの足下へとゆっくりと落ちる。
「どうなってるんだフランドール先生!? だいたいスペルカードは投げる物じゃないだろ!?」
「それはたぶん……秀太君の信じる力が弱いせいだね」
「この訳の分からない世界をどう信用しろっていうんだ!?」
 何かに足をつまずき、前のめりに倒れる。
 痛い……気のせいか……痛みがあるような……いや、それよりも何で石が?
 秀太が顔を上げると、石段が続いているのに気づく。
「へへっ! 貰った……リグルキック!」
 影が覆い、咄嗟に横に身体を転がした瞬間、降下するリグルの体重を乗せた蹴りが石段を粉々に砕く。
 冗談じゃない……あんなの人間が食らったらタダじゃすまない。
「リグル! あたいの獲物を横取りするなー」
「悪いなチルノ……早い者勝ちだ!」
「リグル! 抜け駆けは許さないわよ!」
 いつの間に先回りしたのか、フランドールが階段上へと手招きしている姿が見えた。
「こっちだよ秀太君……上に博麗神社があるの」
 空を飛ぶ者に対して階段はかなり不利な条件だ……けれど、博麗神社があるのなら頼れる人間はそこにしか居ない。
 迫るリグルに秀太はすぐに立ち上がり、石段を駆け上る。
「くそ!?」
「あいつ……まさか博麗神社に向かってるのか?」
「どうするの? 紅白に見つかるよー」
 不安顔になるルーミア。
「紅白に見つかる前に一気にたたみかけるよ」
 振り向くと、浮遊する四匹がスピードを上げて向かってくる。
 四匹の影が迫り、全力で階段を駆け上る。赤い鳥居と神社らしき建物が見えてくる。
「着いた!? あれが……!?」
 秀太が赤い鳥居をくぐった瞬間だった。無数の光弾の数発が秀太の腕と足を掠め、鮮血が飛ぶ。
 右足に激痛が走り、バランスを崩して前のめりに倒れる。
 痛い……これは夢ではなかったのだろうか?
「あたいってば最強ね!」
 笑顔ではしゃぐチルノに呆れた三匹の表情が向く。
「よく見ろチルノ……どう考えても弾が当たってない……人間から大きく外れて賽銭箱が氷漬けになってる」
「私が当てたの」
 自慢気に言うミスティア。
「そーなのかー 私が当てたのよー」
「なにを言ってるんだ……これは私が……」
 こいつらはやっぱり妖怪だけに人を殺すのに何とも思わないのだろう……ほとんどの妖怪は人間を喰らう……幻想郷がこんな恐い場所なら行かなければ良かった……ここは現実で、自分が憧れた者達に殺されようとしている。
 いや……こいつらに殺されるなら本望かもしれない……霊夢や魔理沙は同じ人間でこんな奴等と戦ってきた……そして敵なのに友のように妖怪と付き合える……もちろん自分に霊力や魔力は無いかもしれない……けれど、せめては戦う意地だけの真似をしないと霊夢達に笑われる。
「おい幻想卿ボンクラーズ! 俺はグレイズしただけで、当たってもいねえぞ!」
 痛む足を何とか立たせ、チルノ達に向く。策は何も無い……殴る蹴るの単純な攻撃しかできないが……限界まであがいてやる!
「ボンクラって何だ?」
 呆けるチルノに対し、リグル達、三匹は睨むような目つきを向ける。
「私達をボンクラと言ったな……覚悟はできてるんだろうね人間!」
「人間にボンクラと呼ばれる程、ヤワじゃないのよ!」
「ボンクラと呼ぶ人間は食べて良い人間?」
 三人がスペルカードを取り出す。
 ……終わったかもしれない。
「神霊! 夢想封印!」
 その時、少女の声と共に飛んできたのは人の背丈と同じくらいの無数の光弾だった。青、赤、緑の無数の光弾がチルノ達に当たり、閃光を伴う。
『ぎゃああっ!!!?』
 チルノ達が悲鳴を上げながら吹き飛んでいく。
「あんたら建て直したばかりの神社をまた壊す気……ああもう! 賽銭箱を氷漬けにしてどうするのよこれ!」
 赤いリボンを付けた紅白の巫女服の女性が氷漬けになった賽銭箱を見て大きくうなだれる。その姿には見覚えがあった。
「もしかして博麗霊夢なのか……?」
「そうだけど……あんた誰よ? その格好……もしかして外の人間?」
 霊夢がゆっくりと近づき、まじまじと見る。
「えと、ここでは外の人間という事になるかのかな……とにかくありがとう……本当に助かったよ」
「この博麗神社は人を襲ってはいけないっていうルールがあるのよ……それに妖怪を倒すのが私の仕事でもあらからね」
 霊夢に会った安心感からか、足の痛みと疲れで、思わずその場に膝をつく。
「ちょっとあんた怪我してるじゃない!? すぐに永遠亭に連れて……」
「……これで帰れるんだよな……フランドール先生?」
 辺りを見回してもフランドール先生らしき姿はなく、居るのは遠くで痙攣してるチルノ達だけだった。
「フランドール先生……? って、フランドールと一緒に来たの!?」
「そうだけど……何か問題があるのか?」
「フランドールって言ったら……一時期、紅魔館に閉じ込められてた暴れ者じゃないの!? どうしてくれんのよ! 神社崩壊だけじゃすまないのよ!」
 霊夢が青ざめて秀太を激しく揺さぶる。
 どういう事だろうか? 自分が会ったフランドールとはまるで違う……だとすれば、もえだんのフランドール先生と幻想卿のフランドールは別人という事なのだろうか?
「あら、美味しそうな人間がいるわね」
 その声に霊夢が上空を見上げる。秀太が同じように視線を合わせると、空には二人の人影があった。一人は白髪に緑のワンピースを着込み、刀を携えた少女。そしてもう一人は三角巾が付いた帽子と着物を着た女性……それは白玉楼の主、西行寺幽々子にその庭師の魂魄妖夢に間違いなかった。
「ちょっと幽々子、あんた何しに来たのよ!」
「なにって……小腹が空いたから霊夢のおせんべいを貰う代わりにその人間を食べに来たのよ」
「おせんべいならあげるわよ……だから帰って!」
「そうよね……その子はおせんべいより大切なカギを持ってるもの……だから私もその子が欲しいの……食べたいぐらいにね」
「なに言ってるのよ?」
「妖夢……お願いね」
 幽々子が笑顔で言うと、妖夢はすぐに刀を構える。
「悪いけど……できるだけ後ろに下がってくれる」
 言われた通りに後ろに下がり始めると、腰から払い棒を抜いて構える霊夢。
「幽々子様の命によりその人間を貰い受ける! 人鬼! 未来永劫斬!」
 妖夢がスペルカードを宣言した瞬間、その姿が一瞬にして消える。一秒も経たない内に霊夢の目の前に現れ、妖夢と剣の残像が取り巻いた。一歩も動かない霊夢の身体がみじん切りにされた……はずだった。だが、霊夢の身体はおろか、服に傷一つもない。
 さらに驚いた事に目の前には青い結界障壁が張られて自分が守られていた事に気づく。恐らくは見えないぐらいの速さで行動をしたのだろう……さすが博麗霊夢だ。歴戦を戦い抜いただけに半端な強さではない。
「あら、何処を見ているのかしら?」
 いつの間に横に回り込んでいたのか、霊夢に迫る幽々子は手から無数の光る蝶を放出していた。当たるかと思いきや、それを見越していたのか、数枚の札を投げるとそれは無数の札となって光の蝶を滅していく。
「正々堂々って言う言葉を知らないの? 二人がかりじゃ卑怯じゃない!」
「これも幽々子様のため……悪く思うな!」
 刀を斬り下ろす妖夢……標的だったはずの霊夢が一瞬にして消える。
「妖夢、上よ」
 上に現れた霊夢が飛び蹴りを放つが、妖夢はすぐに反応して刀でガードする。
「霊夢、お茶うけのせんべい何処にある~」
 抜けた声と共に神社の中から現れたのは幼い少女だった。頭に二本の角が生やし、長い茶髪、腰には鎖と瓢箪を帯びている。この容姿で博麗神社に住み着いている者は一人しかいない……伊吹萃香だ。
「萃香、良い所に来たわ……こいつらをあんたのミッシングパワーで追い払って」
「ふ~ん……追い出すだけで良いんだね」
「あら、鬼を使うのなら本気を出さないといけないかしら?」
 幽々子がスペルカードを構える。
「幽霊だから潰しても大丈夫かなぁ……鬼符! ミッシングパワー!」
 萃香がスペルカードを宣言すると、一瞬にして身体が巨人のような大きさへと変貌を遂げる。
「死符! ギャストリドリー……!?」
 スペルカードを発動させようとした瞬間、巨大化した萃香に無残にも幽々子は踏み潰されていた。
「ゆ、ゆ!? ゆゆこさま!!!?」
 萃香が足をどかすと、見事に石床にめりこむ幽々子に妖夢が駆けつける。
「意外にあっけなかったわね」
「……助かった」
 ほっと胸を撫で下ろす秀太に巨大な萃香の腕が掴む。
「ちょっと萃香、何やってるのよ!? そいつは関係ないわよ!」
「なるほどねぇ……幽々子が狙ってた訳が分かった気がするよ……霊夢、こいつは私が攫う事にするよ」
「くうっ!?」
 もがくが、身体をがっちりと掴まれているせいか全くビクともしない。
「あんたに怨みはないけど、私の酒の肴になってもらうよ~」
 笑顔で言う萃香。萃香は嘘吐き嫌う妖怪……冗談など言わない。
 幻想卿で妖怪に攫らわれるという事は喰われるという事だ……このままでは間違いなく命がない……
「萃香、その人間を離しなさいよ……せんべいならタンスの中に隠してあるわよ」
「どうしようかなぁ……鬼っていうのは人間を攫うものだからね~」
「離さなければ……夢想……」
「紅白! あたい達をよくもやったな!」
 吹き飛んでいたチルノ達がようやく目を覚ましたのか、一斉にスペルカードを構える。
「くっ!? 手加減するんじゃなかったわ」
「凍符……」
 チルノ達がスペルカードを宣言しようとした瞬間、黒い残像が飛び込んでくる。
「恋符! マスタースパーク!」
 スペルカード宣言をチルノ達より早く宣言したのは黒い人影だった。両手から発射された虹色の光線がチルノ達を吹き飛ばし、森の木々と一緒に巨大化した萃香を押し倒す。
 バランスを崩して倒れる萃香が縮み、宙に放り出される秀太にワープしてきた霊夢がキャッチする。
「大丈夫?」
「ありがとう」
 着地して秀太を下ろすと、睨むように後ろを振り向く。
「相変わらずお前の参拝客は妖怪ばかりだな」
 秀太もその声に振り向くと、黒色のとんがり帽子を被った少女が居た。エプロン付きの黒白ワンピースを着込み、手には箒を持っている。この魔女のような格好とスペルカードから、霧雨魔理沙なのだろう。
「魔理沙あんたねえ……私にもう少しで当たる所だったじゃない! しかも、一般人がいるのにマスタースパーク放つなんてどういう神経してるのよ!」
「多勢無勢に人質だろ……マスタースパークしかないだろうなと思ってな」
 その時、幽々子のスペルカード宣言が聞えた。
「霊符……无寿の夢」
 幽々子の腕から離れた高速で飛ぶ青い人魂が秀太の身体へと当たる。
「身体が勝手に……!?」
 人魂に囲まれた秀太がまるで磁石に引き寄せられるかのように幽々子に向かっていく。
「幽々子!?」
「ちっ!? 世話が焼けるぜ」
 魔理沙が箒に乗り、飛んだ瞬間、幽々子が素早くカードを掲げる。
「再迷……幻想卿の黄泉還り」
 スペルカードを宣言し、二つの扇を交差させると、地中からピンク色の無数の霊魂が飛び出して魔理沙の行く手を阻む。
「くうっ!? 近づけねえじゃねえか!?」
「こうなったら封魔陣で!」
「人符! 現世斬!」
 霊夢が咄嗟に身をひるがえすと、妖夢の残像と共に剣閃が巫女服の袖に当たって、白の布地が宙を舞う。
「あうっ……私の一張羅が!?」
「幽々子様に代わって我々がお相手する!」
「我々って……あんた一人しかいないじゃない?」
「霊夢!? いつの間にか囲まれてるぜ」
 周囲に無数の人魂が現れたかと思うと、それは人の背丈ほどの白い塊となり、三角巾と目と口が形成される。
「バケ~」
「一人ならともかく……まさかバケバケを出してくるとはね」
「つかまえた」
 笑顔の幽々子が引き寄せた秀太を抱きとめる。
 抱かれた瞬間、ぞっとするような冷たさが身体を伝わってきた……それに息が苦しくて、顔に柔らかい感触? 苦しいのは大きくふくよかな胸にめりこんだからだ。攫われる前にこのままじゃ窒息死になるんじゃ……
「あぷっ!? 息が……!?」
「あら?」
「秀太君! 新しいスペルカードよ!」
 上からフランドール先生の声が聞えと思うと、光るスペルカードが秀太の目の前に迫る。秀太にそれを受け取る術はないかと思われたが……なんとか動いた秀太の手にスペルカードが滑り込む。
「スペルカードが顔に当たったら吹き飛びそうなセリフだな」
「秀太君、今の内にスペルカードを!」
「……身体が動く?」
 スペルカードを受け取ったせいなのか、両手が幽々子の抱きつく腕を解こうとする。
「今の秀太君なら……スペルカードが使えるよ」
「あら、スペルカードを使う気なのかしら? それでどうするの?」
 羽交い絞めにしたまま幽々子が笑顔を向ける。
 カードは掲げる事はできないが、宣言して手に持っているなら問題ないはずだ。
「影符! ドールレプリカ!」
 一瞬、幽々子の手が緩み、その隙に後ろに飛び退く。何か分からないが、これでスペルカードが発動する。
沈黙が流れる……しばらくしても何も反応はない。
「あら、どうしたの? 何も起きていないわよ」
 カードを掲げてなかったせいなのかもしれない……ちゃんと宣言すれば大丈夫なはずだ。
「影符! ドールレプリカ……」
 カードを掲げた瞬間、全身から力が抜けていくのが分かった……まるで何かに自分の力が何かに吸い取られているような感じだ。
 バランスを崩す秀太に幽々子が後ろから抱き寄せ、羽交い絞めにする
「无寿の夢は操るだけじゃなくて、生気を除々に奪っていくの……そしてこうやってお人形さんみたいにぐったりになるのよ」
「くそ……身体に力が入らない」
 力なくうなだれる秀太の手からカードが落ちる。
「美味しそうね……今、食べてしまおうかしら?」
 幽々子がとろりとした目つきで、秀太の首のうなじを舐める。
「やめろ……!?」
 幽々子の冷たい舌が首のうなじをなぞり、全身に怖気が走る。動かそうとするも、身体にまるで力が入らない。
「大丈夫……心臓がある所をひと噛み……それでお終いよ」
 幽々子が耳元で言うと、指で胸座をなぞり、心臓に近い部分で止まる。
「やめ……て……くれ……」
 声さえも力が入らない……視界が除々に暗くなっていく……このまま死ぬのか……?
 せめて自分に力があれば……フランドール並に暴れられれば……負けないのに……
「幽々子!」
 背後からワープして現れた霊夢が二枚の札を投げると、くるくると回りながら幽々子に向かっていく。
「あら、どうしたの霊夢? あなたらしくもないわね。この子を見捨てるなんて……」
 振り向く幽々子にくるくる回る札を幽々子が扇でなぎ払う。
「見捨てないわよ!」
 スライディングしてきた霊夢が幽々子の扇を持った腕を蹴り上げる。
「あら? どうしましょう?」
 着地と同時に幽々子から秀太を引き放し、札を投げて結界を形成する。
「立てる? これ以上、面倒は見切れないから神社の中に隠れて……」
「…………」
 秀太がうつむいたままふらふらと歩く。
「ちょっと!? 神社はそっちの方じゃないわよ」
「……私はフランドールだ」
 霊夢に振り向く秀太の目は虚ろで、焦点が合っていなかった。
「えっ? な、なに言ってるの?」
 秀太が落ちていたスペルカードを拾う。
「影符……ドールレプリカ」
 秀太がスペルカード宣言した瞬間、その身体が紅色の光に包まれていた。
「こっちは片付いたぜ……っておい……何が起こってるんだ!?」
 駆け寄ってきた魔理沙が、眩しさに思わず手をかざす。
「分からない……ただ言えることはこの力は霊気や妖気とはまるで違うものよ」
 紅色の閃光が博霊神社を包んだ。
 閃光が晴れると共に現れたのは帽子を被った金髪の幼女だった。白赤のワンピースを着込み、背中の翼には翼膜の代わりにひし形の幾つもの宝石のような物が付いていた。
 特徴のある翼と幼い容姿から霊夢達はその者が吸血鬼、フランドール・スカーレットだという事を知っていた。
 だが、同時に新たな疑問が生まれる。この者はフランドール・スカーレット本人なのか? あの少年は何処へ行ったのか……
「私はフランドールだ……私はフランドールだ……私はフランドールだ……私はフランドールだ……」
「あら、どうしましょう?」
 幽々子は距離を取りつつも、笑顔のまま構えようともしない。
「私はフランドール……」
 幽々子の方を向くフランドールに魔理沙が歩む寄る。
「いや、お前はフランドールじゃないぜ……真っ赤な偽者だ」
 その言葉に睨むように魔理沙を見るフランドール。
「魔理沙! ちょっと刺激させるような事を言わないでよ」
「だってそうだろ? こいつには妖気、魔力すら感じない只の人間だぜ」
「私は……! フランドールだ!!」
 叫ぶフランドールに余裕の笑みすら見せる魔理沙。
「お前が本当に私の知っているフランドール・スカーレットならスペルカードを使ってみるんだな……すぐに化けの皮が剥がれるぜ」
「……禁弾……スターボウブレイク!」
 フランドールがスペルカードを掲げ、翼を広げると、ひし型の宝石から無数の紅い光弾がマシンガンのように発射される。
 微動だに動かずに紅い光弾を避ける霊夢に対し、魔理沙は箒に乗り、弾幕の隙間を突き抜け、フランドールに向かう。
「フランドールにしては弾幕ががら空きだぜ」
 目を回して倒れている妖夢に無数の紅い光弾が迫る。
「よっと」
 萃香が倒れている妖夢の前に立ち、黒い球を投げると、ブラックホールが形成されて向かってきた紅い光弾が吸い込まれていく。
「妖夢を助けてくれてありがとう……あなたがまさか妖夢を助けてくれると思わなかったわ」
 いつの間にか移動していたのか、幽々子が萃香にゆっくり歩み寄る。
「踏みつぶしたお詫びよ……私にあいつの事を気づかせるためにわざと踏まれたんでしょう?」
 ひょうたんの酒を飲み、幽々子に笑顔を向ける萃香。
「なんの事かしら? あら、もう勝負がつきそうね」
「勝負? まあ、誰が勝つかは分かっているけどねぇ」
 紅い光弾を避けながら迫る魔理沙がカードを掲げる。
「コピー弾幕より……弾幕はパワーだぜ! 魔符! スターダストレヴァリエ!」
「魔理沙! 駄目よそいつは怪我してる!」
「なんだって!?」
 虹色の光を帯びた魔理沙が体当たりしようとするも、フランドールの肩と足に血が流れ出ているのに気づき、旋回し、霊夢の側に着地する。
「魔理沙の言う通りそいつは妖怪でも魔法使いでもない只の人間よ……あんたのパワー弾幕を喰らったら粉々に吹き飛ぶわよ!」
「じゃあ、どうやって攻撃しろっていうんだよ! このまま弾幕遊びをしてろっていうのか!」
「何か方法を考えるのよ……氷漬けにするとか、鳥目にするとか……」
「方法なんてあるのか? それにお前が言ったのはあいつらの能力じゃねえか……のびちまってるぜ」
 森の脇で吹き飛んで、気絶しているチルノ達を魔理沙が睨む。
「それじゃあ、弾幕を加減するなりしてどうにかして」
「へっ……悪いが霊夢、私のやり方でやらせもらうぜ!」
 箒で向かう魔理沙にフランドールが飛び、カードを掲げる。
「禁忌……レーヴァティン」
 フランドールの両手に紅い光線が収束されるそれを飛んでくる魔理沙に向けてなぎ払う。
「悪いが、お前とこれ以上、付き合っているほど暇じゃないんでな!」
 魔理沙は身体を回転させながら避けると、ミニ八卦炉を宙に投げ、カードを掲げる。
「おおおおっ!!」
「やめなさいよ弾幕パワー馬鹿! 聞えてないの!? ……私のスペルカードじゃ間に合わない!?」
「恋符! マスタースパーク!」
 ミニ八卦炉をキャッチし、それをフランドールに向ける。八卦炉に魔法陣が形成され、虹色の光線が発射された瞬間……
「波符! マインドシェイカー!」
 少女のスペルカード発言の声が聞えた瞬間、霊夢達にはフランドールが二重に重なったように見えた。発射された魔理沙のマスタースパークがフランドールから大きく逸れ、空の彼方へと飛んでいく。
「狂気を感じて飛んできてみれば……この人間を本気で殺す気だったの? 同じ人間とは思えないわね」
 声の方へと振り向くと、うさ耳が生えた少女が空を泳いで近づいて来る。
 ブレザーに赤い瞳のその少女が永遠亭の兎、鈴仙・優曇華院・イナバだという事に魔理沙は気づく。
「邪魔するとはいい度胸だな」
 睨む魔理沙に溜息をつく優曇華。
「邪魔しに来たんじゃなくて助けに来たのよ……この子の狂気を打ち消す方法があるの……協力してくれる?」
「どうしようってんだ?」
「あの子の弾幕を引き付けてくれればそれで良いわ……」
 その時、フランドールが魔理沙と優曇華へと接近する。
 フランドールが縦に振り下ろしてくるレーヴァティンを避ける魔理沙と優曇華。
「面倒な役回りだぜ」
 魔理沙が帽子を被り直し、舌打ちをする。
「私も手伝う事があれば……」
 ふよふよと宙を漂う霊夢が言う。
「いらないわ」
「えっ?」
 その言葉に思わず肩を落とす霊夢。
「こっちだぜ……コピー弾幕しか撃てない偽フランドール!」
 優曇華の方に向くフランドールを挑発する魔理沙。
「ウウウッ!!」
 横に払ってくるレーヴァティンを回転しながら回り込んで避ける魔理沙。
「まともなフランドールならもっとマシなレーヴァティンを撃ってくるんだがな」
 優曇華がゆっくりとフランドールの背後に近づき、カードを掲げる。
「弱心……ディモチヴェイション!」
 近接に持ち込んだ優曇華がフランドールに顔を近づけた。
 優曇華の赤い瞳から発せられる衝撃波によって吹き飛ばされるはずだった……だが、フランドールは身体を大きく横に回転させて避け、鋭利な爪で優曇華の腹を切り裂く。
「……まずい!?」
 鮮血が舞い、宙をよろける優曇華にフランドールのレーヴァティンが迫る。
 横になぎ払うレーヴァティンによって優曇華の身体が真っ二つにされるかと思った矢先……飛んできた札がレーヴァティンを持った腕に札が張り付き、悲鳴を上げるフランドール。
「やるなら今よ」
 札を構える霊夢が言う。
「恩に着るわ……弱心! ディモチヴェイション!」
 優曇華がフランドールに接近し、紅い瞳から衝撃波を発した。
 衝撃波を受けたフランドールが紅い光を帯びて、少年の秀太の姿へと戻る。
 翼を失って真っ逆さまに落ちていく秀太を無数の霧が集まって受け止める。
「じゃあ~さっそく攫っていくよ」
 ふわふわと浮かぶ萃香が片手で秀太を持ち上げる。
「なにを考えているか知らないけど……萃香、いくらあんたでもここで人間を攫う事は許さないわよ!」
 萃香に向けて札を構える霊夢。
「どうしようかな~」
「ここは昔のよしみという事で退いてくれないかしら?」
 萃香の前に空間の切れ目が入り、その隙間から現れたのは日傘を携えた女性だった。
 帽子を被り、流れるような長い金髪にフリルのワンピースを着込んでいる。それは妖怪の賢者と言われる八雲紫の姿だった。
「紫か~そろそろ来る頃だと思ってたよ」
「幽々子も……今、ここで戦うのは得策ではないと思うの」
「あら、残念……鍵はしばらくお預けということね」
 言葉では言うものの、残念そうな素振りを見せない幽々子。
「そこのあなた達もよ」
「うわあ!?」
 紫が脇の茂みに目をくばると、茂みががさがさと揺れ、チルノ、リグル、ミスティア、ルーミアの四人が前のめりに倒れ込んでくる。
「そいつはあたいの子分だよ……文句あるの?」
 チルノが立ち上がり、言う。
「おい、食べるために追ってたんじゃないのか?」
 不思議そうに言うリグル。
「私は食べるためよー」
 と、よだれを垂らして言うルーミア。
「とにかく……そいつは私達が追ってた獲物よ……他の妖怪にとやかく言われる筋合いはないわ」
「撃たれ弱いくせにしぶとい連中だな……もう一発マスタースパークで……」
 チルノ達にミニ八卦炉を向ける魔理沙に紫が手で遮る。
「幻想卿に住む者なら知っているでしょう? いかなる妖怪や妖精であろうともこの神社で人間を襲う事は許されないわ……それとも私や巫女がその約束を破った者を許すとでも思っているのかしら?」
 憤怒の表情を見せる紫に身震いするチルノ達。
「お、覚えてろよ……バーカ!?」
「ま、待てよチルノ!?」
 逃げるチルノにリグル達も追うようにして空の彼方へと消えていく。
「でしょ……霊夢?」
 憤怒の表情から一変して霊夢に笑顔を向ける紫。
「あんたが言う言葉じゃ……いまいち説得力はないけどね」
「まあ、紫が言うならしかたないね~今回は見逃すよ」
 萃香が数本の髪を抜いてばら撒き、小さな分身を作り出すと、それに秀太を乗せる。すると、小さな分身達は秀太を社の中へと運び込む。
「応急手当をお願い……私、師匠を呼んで来る」
 そう言って優曇華はすぐさま飛び去っていく。
「外の人間がスペルカードを使ってフランドールに!? こ、これは幻想卿きっての大事件だわ!?」
 木の上から声が聞こえたかと思うと、黒い翼を羽ばたかせて猛スピードで空の彼方へと向かっていく影。
 シルエットは黒い髪に烏帽子……そして空から落ちてきた文々新聞と書かれた記事……霊夢達はそれが天狗の新聞記者、射命丸文だとすぐに分かった。
 空に消えていく文を見た霊夢が思わず溜息を漏らす。
「とにかく……これ以上、妖怪が集まらない内に神社の中へ入って……あと、魔理沙はアリスと咲夜を連れて来てくれない」
「構わないが……どうするんだ?」
「こいつについて話し合うのよ……これ以上、妖怪達とバトルロワイヤルするのはごめんよ」
「それなら私が連れて来るわ……そんなに時間もかからないと思うしね」
 そう言うと、紫が空間の切れ目の中に入り、姿を消した。



 目を開けると、霊夢が顔を覗き込んできた。
「気がついた?」
「あれ? 俺……どうしたんだ?」
 幽々子に羽交い絞めにされ、スペルカードを使ったとこまでは覚えているのだが……その後に何があったのか思い出す事ができなかった。
「何も覚えてないの?」
「フランドールになって、神社でさんざん暴れてたのにな……悪気があってやってたとしか思えないぜ」
「俺がフランドールに?」
「魔理沙!」
 悪態をつく魔理沙に霊夢は部屋の外へ押し出し、襖を閉める。
「ごめん……いろいろ迷惑かけたみたいで……っ!?」
 布団から起き上がろうとすると、肩と足に痛みが走った。
「動いちゃ駄目よ……まだ応急手当てしかしてないんだから……永琳が来るまでおとなしくしててね」
身体を見ると、Tシャツの肩やジーンズの一部が切り取られ、怪我をした部分に包帯が巻かれていた。
「これは……」
「あっ……あんたの服を台無しにしてごめんね。男の子だから女の私達が脱がせるのもあれかなと思って……代わりの着物をすぐに用意するわ」
「確かに俺はこんな口調で……身なりとかもこうだけど……その……」
「えっ?」
 頬を赤める秀太に不思議そうに首をかしげる霊夢。
「いや……聞きたい事があって……」
「なに? 私に答えられる事があるなら何でも言って」
「霊夢……俺は元の世界に戻れるんだよな?」
「それは……」
「無理よ」
 声に振り向くと、いつの間にか後ろに立っていた女性に気づく。それがすぐに紫だと分かった。特徴のある帽子とフリルのある服を着ていたからだ。
「無理ってどういう事だよ……確か霊夢の力があれば……外の世界に戻れるんだよな?」
「それは誰に聞いた話なのかしら?」
 何が可笑しいのか、笑みを浮かべながら言う紫。
「誰って……稗田阿求が書いた求聞史記に……この神社に辿り着けば元の世界に戻れるって……」
「外の世界にも出回っているとは聞いた事があったけど……それは正確な情報ではないわ」
「だって阿求が書いた本だろう……正確じゃないって……」
「どうして博麗神社の付近で外から迷い込む人間や外の世界の物が来ると思う? それはこの付近の結界が弱まっているから……最初は小さな穴だったのかもしれない……それが外からの人や物が入る度に除々に結界の穴は大きくなっていき、下手をすれば結界に亀裂が入って壊れてしまうかもしれないわ」
 そう言って紫は障子に空いていた穴を何処から取り出した扇を入れ、ゆっくりと開いていく。当然ながら扇を除々に開いていくと、障子の穴が大きくなっていく。
「外の世界に戻るにはその空いた穴から出るんだけど……出る時に穴を大きく広げてしまうの……だから結界を元に戻すまで滞在してもらう事になってるのよ」
 霊夢は言いながら、障子の穴を空ける紫を睨むように見る。
「ちなみにその結界の穴を塞ぐ期間ってどのくらい?」
「霊夢がさぼらずに順調にいけば半年……長くて一年ぐらいかしら」
「そういうあんただって結界の修復をさぼって寝てばかりいるじゃないのよ」
「い、一年!?」
 思わずうなだれる秀太。妖怪に狙われている今の現状を考えると、とてもではないが、一年を生き延びる事が困難のように思える。
「どうして私の名前を知ってるのかと思ったら求聞式で知ってたのね」
「求聞式だけじゃないわよね?」
 そう言って笑みをこぼす紫。
「なに? 文々新聞も出回ってるの?」
「たとえばゲームとか、言葉で現せない内容のどうじ……」
 紫の言葉に咳払いし、慌てて他の課題をふる。
「その間、身寄りのない俺はどうなるんだ!?」
「そうそう……あんたの名前を聞いてなかったわね」
「……飯井地……秀太だ」
 恥ずかしそうに答える秀太。
「イージーシューター? 変わった名前ね」
「飯井地秀太だ! どいつもこいつも!」
 思わず身を起こす秀太。
「あっ!? 秀太ね……えと、滞在する場所を決めようと思ってるんだけど、希望はある?」
「なるほどね……」
 紫がまじまじと秀太の身体を見る。
「な、何だよ!?」
 紫が後ろに回り込み、左手を伸ばして秀太を抱き寄せると、右手で胸を揉むようにさすり、股間をまさぐり始める。
「あううっ!? 何をするんだ!?」
 紫の腕を引き剥がそうとするも、その手が女とは思えない力で掴まれ、なすがままに股間を蹂躙されるしかなかった。
「紫……な、な、な、な、な、何やってるのよ!?」
 紫の突然の行動にどうしていいか分からず頬を染めておろおろとする霊夢。
「や、やめて……くれ!? このままじゃ!?」
 秀太が除々に荒い息遣いとなり、頬がトマトのように真っ赤に染まっていく。
「これ……秘密にしてるの?」
「別に……秘密にしてる訳じゃない!? 俺はおん……!?」
 暴露しようとした時、股間をまさぐっていた紫の手が口を押さえる。
「なら、言わなくてもいいじゃない……その方が私にとっても面白いしね」
 紫が手を離し、部屋から出て行くと、布団の上に突っ伏す秀太。
「秀太……大丈夫?」
 涙目で霊夢に顔を向ける秀太。
「とりあえず風呂……入らせてくれないか」
「怪我してるんだから駄目よ……それにここでは外の世界のガスとか、スイドウとか、キュトウキなんていうものはないんだから湯はすぐに張れないのよ」
「じゃあ、着替えだけでもいい」
「そうね……そうだ! こーりんに貰ったお古の着物があったわ」
 そう言って霊夢が押し入れから出してきたのはいかにも香霖堂の店主が着ていそうな着物だった。
「本当にこーりんの着物なんだな」
 顔をしかめるも、それを受け取る秀太。
「今、滞在するホームスティ場所を話し合っているんだけど……希望とかある?」
「そういう話なら俺もその話に参加するよ……話だけならできるし」
「そうね……じゃあ、着替えたら隣の居間に来てくれる」
 そう言うと、霊夢は部屋の襖を閉める。後からお菓子を食い散らかすなと言う霊夢の怒鳴り声が聞こえ、秀太は思わず苦笑いする。



「あっ……きたきた……着物、なかなか似合うじゃないの」
 着替えてから居間へ行くと、霊夢が着物を誉めてくれたものの、こちらを見てくすりと笑う紫が少し癇にさわる。
 着物は旅館の浴衣と同じように紐や帯を縛るだけで、思ったより問題なく着れた。
 八畳一間のちゃぶ台を囲むのは霊夢と紫はもちろん萃香、魔理沙、幽々子、妖夢、咲夜、アリスというメンツだった……しかし、自分を攫おうとした者をここにいるものどうしたものだろうか……
「飯井地秀太です……よろしく」
 お辞儀すると、一斉に視線が向く。
『イージーシューター?』
 見事なまでに声を合わせて言う妖怪達。
「飯井地秀太だ! 本当にどいつもこいつも!」
「まぁまぁ。とりあえず落ち着いて座りなよ」
 萃香が出してしてくれた座布団に座り、痛めないように足を伸ばす。
「なんで幽々子がいるんだ? ホームスティ場所の候補とかだったりとかしないよな」
 座ってみると、萃香と身体が当たりそうになるぐらい近い。あらためて見ると、八畳の居間によくもまあ、この狭さでこの人数が入れたものだと今さらながら感心する。
「そのまさかなんだけど……居候させる候補だった里の人間に拒否されちゃったのよ……だから今いるメンバーで何とかしようかと思ってるの」
 溜息をつく霊夢。
「今いるメンバーって……紫や幽々子は人を喰うんだろう?」
 紫や幽々子に邪悪な笑みを向けられ、身体を震わせる秀太。
「だから滞在している秀太に手を出してはいけないというルールを作ったのよ……もちろん滞在中は奪い合いや危害を加える事も禁止……もし、滞在中に秀太に怪我でもさせるような事があれば宴会の席で毎回のように裸踊りをさせてあげるわ!」
 ちゃぶ台を見ると、筆で書かれた紙の署名らしき物が何枚かあることに気づく。
「なら、私の家に決まりだな……食う物には困らないしな」
「却下……あんた家を空ける事が多いし、この前なんかちょっと触っただけで本の雪崩が起きて生き埋めになる所だったわよ」
「……私の家ならその……いつも家にいるし、魔理沙もたまに来るし……大丈夫じゃないかしら」
 洋服を着た金髪の少女、アリスが恥ずかしそうに言う。
「だけどな……お前の家、人形が危ないんだよな……人形の首を取ろうとしたら襲ってきたぞ」
「それは魔理沙が乱暴な事をするからでしょ!」
「あーあもう!? 他にいないの?」
「なら、私の白玉楼に来れば良いわ……部屋はいっぱいあるし、食事に困らないし、……紫がたまに来るぐらいで妖怪に襲われる事もないわよ……それでも満足できないなら最高のおもてなしをしてあげますわ」
「でも……食事には困ります」
 ぼそりと言う妖夢に幽々子が扇で頭を叩く。
「こらっ! そこはフォローでしょ妖夢!」
「は、はい!? でも、幽々子様の食事量を減らしてくださらないと……居候させるのはとてもじゃないですが……」
「よ~う~む~」
 目を光らせて言う幽々子。一同はそのやりとりに呆れ顔になる。
「はい次! もうちょっとまともな引き取り手はいないの!」
「それなら私が引き取ってあげても良いのよ……家には藍や橙がいるけど、一人ぐらい増えた所でたいして変わらないわ」
 紫が消えたかと思うと、横から突如現れて耳に吐息をかけられ、仰け反る秀太。
「うわああっ!?」
「退屈はさせないわよ」
 笑みを向ける紫になぜか怖気のようなものが走るのはなぜだろうか? 紫の家に行ったら間違いなく恥辱させられてしまうのも確かだが……
「あんたはいろいろな意味で論外よ」
 呆れ顔の霊夢が言う。
「紅魔館なら空いているわよ……ちょうど人手も足りないし、執事として手伝ってくれるのならお嬢様も喜ぶわ」
「そうね……あんたの所は人間も招き入れてたりするから……大丈夫だとは思うけど……」
「ちょっと待て霊夢……相手は吸血鬼だぜ。そう簡単に信用したら駄目だぜ……血を吸わせたいだけかもしれないしな」
「いくらお嬢様の頼みでも人間の血を死ぬまで吸わせたりしないわよ……外の世界では献血といって血が欲しい人に200mLか400mLまで血を提供してくれるのよね?」
「確かに間違ってはいないけど……間違ってはいないけど……意図が違う気がする」
 紅魔館で多くの人を集めて献血を促す咲夜を想像して思わず額を押さえる秀太。
「ちなみにお嬢様に献血をしてくださったら……紅茶ともれなくお菓子がいただけるわ」
「あんたも却下!」
「ここにはまともな保護者になるような奴がいないのか? 情けない話だぜ」
 笑って言う魔理沙。人の事を言えるような義理ではないのだが……
「そういえば咲夜……フランドール先生いや、フランドールは紅魔館にいるんだよな?」
「それはどういう……」
「そうだったわね……秀太はあのフランドール・スカーレットにこの幻想卿に連れてこられたっていうのよ……しかも、スペルカードでフランドールに変身したり……外の世界から来た人間がスペルカードを使うなんて初めてよ……あんたのお嬢様が何か小細工したとしか思えないわよ」
「そんなはずは!? フラン様はずっとお部屋におられたはず……」
「……それじゃあ」
 霊夢達の視線が一斉にこちらに向く。
「ごめん……他人のそら似かもしれない……スペルカードも彼女から貰った物だったし、そう名乗っていたから……」
 そう言うと、霊夢達は安堵の溜息をつく。しかし、そうなるとあのフランドールは何者なのだろうか? もえだんのフランドールがそのままの性格という事はこっちのフランドールが……? 考えれば考えるほど分からなくなる。
「決まらないならここで引き取るしかないわね……妖怪はよく来るけど、私がいれば問題はないでしょう? 掃除とか家事とか、宴会の後片付けを手伝ってくれるならずっと居てもいいわよ」
 笑顔で言う霊夢にブーイングの嵐が飛ぶ。
「霊夢、お前は楽してサボりたいだけだろ? 意図が見え見えだぜ」
「なによ……私がいつもサボっているみたいに言わないでよ……少し手伝わせるぐらい良いじゃない」
「霊夢が引き取るなら私はぜんぜん構わないよ~」
「というかお前も居候だろう」
 合意する萃香に魔理沙が髪をぐしゃぐしゃにする。
「確かに魔理沙の言う通り、霊夢なら手伝わせてサボっていそうだけど」
 と、アリスが言う。
「ああもうっ! じゃあ、どうするのよ?」
「この子の安全の確保というのなら私の家の方が安全よ……私の境界にどんな妖怪で
あろうと入れる者はいない」
 紫が秀太を片手で抱き寄せ、扇を振り下ろすと、その空間に黒い切れ目が入る。
「紫!? あんたまでここで人攫いをするなんて!?」
 立ち上がり、札を構える霊夢に紫は秀太を盾にする。
「俺を晩飯にでもしようっていうのか?」
 片手で抱き寄せているものの、その腕は尋常ではない力で羽交い絞めにしていて、全く動く事ができない。
「別にとって喰おうとは思ってないわ……ほとぼりが冷めるまで匿ってあげようと言ってるの……この神社では妖怪の干渉が強すぎてこの集まった妖怪達ですら敵になる事すらある……霊夢、あなたの手でこの子を守りきる事ができるかしら?」
「それは!? もう! 訳が分からないわよ……どうして秀太を欲しがる訳? だいたいあんた達が言ってる鍵って何よ?」
「あなたは自分の家にドアを閉める時に鍵を使わないの? 家に勝手にあがられるのは嫌でしょ?」
「その子は永遠邸で引き取らせてもらうわよ」
秀太を空間の隙間に入れようとした時、襖を開けて入ってきたのは紺色のナース帽子を被った若い女性だった。センターに赤と紺色に別れたナース服を着ている。そして側には優曇華がいる……特徴から見ると、間違いなくこの人が八意永琳なのだろう。
「あら、久しぶりね薬師さん……まだ診てもいないのに入院させるほど酷いという事かしら?」
「症状は優曇華に聞いたわ……彼を離してくれないかしら? 外の人間は心も身体も強くはできていないわ……見た事も無い世界で妖怪に襲われる……それがどれだけ恐い事だかあなたには分かる? 例え身体の傷は癒えても心の傷は治りにくいものなのよ」
 恐れもせずに歩む寄る永琳に紫は鼻で笑うと、秀太を離す。
 足の痛みのせいか、バランスを崩す秀太に永琳と優曇華が抱き寄せる。
「これを飲んで……痛みと傷がすぐに癒えるわ」
 永琳は薬箱から緑のドロドロとした液体が入ったビンを秀太に渡す。
「大丈夫よ……師匠の作った薬だから」
 抵抗はあったものの、笑顔で言う優曇華を信じてビンの栓を抜いて一気に飲み干した。
 薬は吐きそうなほど苦く、喉ごしはカルピスの原液を飲まされたような後味だったが、痛みが除々に引いていくのが分かった。
「すごい……痛みが消えてく」
 足と肩の包帯を解くと、傷が無かったかのように消えていた。
「霊夢、この子を永遠亭に連れて行くけど、問題ないわね?」
「そうね……月の民とはいえ人間だし、問題はなさそうね……後は本人の意思だけど」
「俺はぜんぜん構わない」
 秀太は思わず安堵の溜息をつく。一時はどうなる事かと思ったが、最強最悪の紫の家に行く事は免れ、もっとも安全な方面に行きそうだ。
「薬師さん……その子をいったいどうするつもりかしら?」
「どうもしないわ……さっきも言った通りにこの子には心のケアが必要なの……ましてや妖怪の館の中では不安になるばかりで、逆効果になるだけよ」
「納得いかないわ! そうやって秀太を独り占めにするつもりでしょ?」
 そう言って幽々子が秀太を抱き寄せる。
 ふくよかな弾力のある胸に顔が埋まり、息が詰まりそうになる。
「あう~」
「本人の意思はどうなの? 何処へ行きたいかは秀太自身が決めるべきではないの?」
 と、咲夜。
「確かにそうよねえ……秀太は何処の家に……!?」
 何処からか、寒気のようなモノを感じた。霊夢もそれに反応してか、言葉を失う。
『こっちよね』
 声を合わせて紫、幽々子、咲夜が目を光らせながら凄まじい視線を送る。これはまずい……どちらかを選べば確実に殺されるのかもしれない……
「決められない場合はどうすれば良い?」
 肩を落とす秀太に霊夢は溜息をつく。
「しかたないわね……それなら月ごとにホームスティ場所を決めましょう……まず最初は安全な方から永遠亭、魔理沙の霧雨魔法店、アリスの家、紅魔館、白玉楼、八雲家、博麗神社の順で行くわ……それで最終的には秀太が長く住む場所を決めてもらう。いい?」
『は~い』
 と、やる気の無い一同の返事だったが……一応は納得したようだ。
「じゃあ、これにて解散!」



 秀太は空が飛べないという事で、恥ずかしながらも優曇華に抱えられる形で永遠亭へと向かった。
 竹林に入ると、優曇華はここが迷いの竹林なのだと教えてくれた。竹はすぐ成長するため迷いやすいはずなのだが、永琳と優曇華は止まりもせずに竹林を突き進んでいた。
「目印があるのか?」
「波長で分かるの。永遠亭は特に波長が独特なのよ……えと、師匠の場合は……?」
「そうね……長年の勘みたいものかしら」
 と、永琳は笑って答えた。
 しばらく進むと、竹林の中に歴史の教科書で見るかのように古風な大きな屋敷が見える。
「あれが永遠亭……」
「そう……これが姫様のお屋敷である永遠亭よ」
 見映えがまるで建築されたばかりの歴史資料館のようだ……元からここにあった建築物と思えないような外観の美しさだった。
「師匠、来客が来る事はまだ話してなかったですよね?」
「そうね……急だったから話してなかったわね……優曇華、お願い」
「ここで待っててくれる……警備の人に話さないといけないから」
 優曇華が秀太を下ろすと、門にいるガードマンのような服を着たうさ耳の女達二人に話し始める。ウサギというから二足歩行のメルヘンチックな獣を想像してしまったが、容姿は人間にうさ耳が生えたぐらいで、優曇華と同じかわいい女の子だ。
「あなたがイージーシューターじゃなくて……飯井地秀太さんですね」
 そう言って警備のウサギが近づき、黒い蛍光灯のような物を身体に当てがう。
「そうだけど」
「金属、呪符、マジックアイテムなどは持ち歩いてはいませんね? 持ってる場合はここに預けてくださいね」
「特に何も……」
 ピピッ!
 腰の辺りで電子音が鳴り響く。
「腰に何か着けてますか?」
 秀太が腰に手を当て、帯の隙間にある物を取り出す。それは携帯電話だった。着替える時に帯に挟んでいたのをすっかり忘れていた。
「どうやらそれみたいですね」
 警備のウサギに携帯を渡し、もう一度チェックしてもらうと鳴る事なく終えた。
「さすが姫様がいるお屋敷だけにずいぶん警備が厳しいんだな」
「姫様は死ぬ人ではないので、狙う者は少ないの……だけど月都万象展以来、泥棒の進入が多くなってしまったのよ……もちろんここに辿り着ける者は少ないのだけど、警備を硬くしないと、いずれは何かを盗まれるからよ」
「特に最近は黒白の魔法使いが多いですよね……強いだけに私と師匠で追い返すのがやっとだったり」
「だから急病人や馴染みの通院者以外は警備のチェックを受けないと、通せない事になってるのよ」
 黒白の魔法使いという言葉で誰だかは分かった。永遠亭で魔理沙が物を盗んで暴れる姿を想像して思わず苦笑いする。
 秀太が門を通ろうとすると、チェックをした警備のウサギが止める。
「待ってください!」
「何だよ!? まだあるのか?」
「携帯電話を忘れてます……電子機器は持ち込んでも大丈夫なので」
 警備のウサギから携帯電話を受け取る。
「でも……ここでは使えそうもなさそうだな」
 携帯を開くと、当然かアンテナは圏外に表示されていた。
「これはあなたにとって大切な思い出の物です……大事にしてくださいね」
 そう言ってにこりと笑う警備のウサギ。携帯が大切な思い出……?
「秀太、こっち」
 先に進む優曇華に促され、その後を追った。
 広大な竹林の庭には池と水車小屋が幾つか見られ、その屋根にはソーラーパネルのような物が取り付けられている。
「水力とソーラーパネルで電気を補っているのか?」
「そうよ……幻想卿には発電所なんていうものはないからこの屋敷の全てを電気で補えるほどではないけど、普通に生活する分には支障はないわね」
 永遠亭の大きな玄関を抜け、進むと、襖に囲まれた通路が続く。
「まるで永遠に続いてそうだな」
「だって永遠亭だし」
 優曇華がさらりと凄い事を言ったような気がしたが、とりあえず聞かなかった事にする。
「それじゃあ、私は姫様に伝えてくるわね……優曇華はこのまま部屋の案内をしていて」
「はい」
 永琳はそのまま無限に続いていそうな奥の廊下へと進んでいく。
「秀太の部屋はここ」
 襖をいくつか抜けて歩いて行くと、優曇華が竹の一と書かれた表札の襖を開ける。
「思ったよりも広い部屋だな」
 まるで旅館のような一室だった。部屋は畳み部屋にテーブルが置かれ、家具はタンスに衣装棚まである。そして奥には庭を見渡せるガラス窓がある。
「お客さんに貸す部屋だからかもね」
「優曇華の部屋もこんな感じなのか?」
「私の部屋はちなみにウサギ専用の松、ちょっと、ここより小ぢんまりしてるかな……ちなみにここは竹の間って言ってお客さん専用、そして梅の間は師匠と姫様の部屋に分かれてるの……ってあれ? 私、自己紹介はまだだったような!? もしかして月のスパイ!?」
 怯える優曇華。
「そういうんじゃなくて……こっちのとはちょっと違うけど外の世界にも求聞式が出回っているんだ……だから永琳もてゐも、姫様の輝夜も名前とか特徴は知ってるんだ」
「なるほどね。確か師匠も外の世界の人間で稀に幻想卿でも詳しい人がいるって言ってたっけ……月のスパイかと思って本当にビックリしたわよ」
 プルルルッ!
 何処からか、電話の音が聞えてくる。
「へっ? この部屋に電話があるのか!?」
「永遠亭は広いからどの部屋にも電話があるの……便利でしょ?」
 優曇華が台に置いてあった電話の受話器を取る。
「本当に旅館みたいな設備だな」
「はい、優曇華です。師匠……はい、いますよ。ちょうど部屋に案内したとこです……師匠の言った通りで、幻想卿を知ってる方ですね……ご飯ですか? 分かりましたすぐ行きます」
「電話は永琳からか?」
「じゃあ、一緒にご飯を食べにいきましょう」
「……一緒にご飯?」

 優曇華に連れて来られた場所はまるで旅館のような宴会場の広い畳み部屋だった。長テーブルに座布団が用意された席にはウサギ達が席を埋め尽くし、上座にはワンピースを着た長い黒髪の少女、蓬莱山輝夜と思しき人物とその隣には永琳、向かい側にはうさ耳に黒い髪の少女、因幡てゐと思われる人物がいる。
「あなたが秀太……本当に普通の人間なのね」
「どうも飯井地秀太です」
 会釈すると、輝夜がニコリと微笑む。
「あら、イージーシューターなの?」
「……飯井地秀太」
 うなだれる秀太。
「秀太、とりあえずはお座りになって」
 輝夜に促され、てゐの隣の席に座る。そしてその隣には優曇華が座る。
「……私は主である蓬莱山輝夜、隣が八意永琳、優曇華は自己紹介したわよね?」
「はい」
「そしてあなたから右隣が因幡てゐ」
「よろしくね」
 笑顔で会釈するてゐ。
「私は姫様なんて呼ばれているけど、ここは王制ではないの……だから私達やウサギ達を家族だと思って振る舞いなさい……まあ、多少の労働や規律はあるけどね」
「……家族か」
「秀太、ここではみんな家族なの……困った事があれば何でも相談して」
「そう……ここでは秘密を全てさらけ出して良いのよ……そうすれば悩みも解決して幸せも訪れるわよ」
「てゐ! また、何か企んでるでしょ!」
 うさ耳をせわしなく動かし、悪戯な笑みを向けるてゐ。
「何も考えてないわよ」
「それじゃあ、自己紹介を終えたところで、新しい家族に加わった秀太に乾杯~」
 輝夜のかけ声で、ウサギ達が一斉におちょこを上げた。
「姫様、今日はご自慢の歌を歌われないんですか?」
 何処からか、引っ張ってきたのか、輝夜にマイクを手渡すてゐ。
「てゐ、余計な事を……」
「じゃあ、とっておきの私の歌を聞かせてあげるわ」
 輝夜がライトアップされた舞台へと上がる。よく見ると、舞台にはカラオケマシンがある事に気づく。
「……ここはカラオケまであるのか?」
 まさか竹取飛翔やヘルプミーえ~りんではないと思うが……
 輝夜が曲を入れ、メロディが流れ始める。
 そして輝夜がマイクのコードをムチのように床に叩きつけた。
「私の歌を聞けえええっ!!」
 輝夜様コールのウサギ達の黄色声援……このメロディはまさかとは思った。
 歌詞に「腹ぺこなの」「ポイズンシー」と聞えてきたが……とりあえず聞かなかった事にする。
「今日は姫様も料理をふるってくれたわ……じゃんじゃん食べてね」
 永琳はそう言うと、テーブルに置かれた船盛りから刺身を小皿に取り分けてくれた。
「ありがとう」
 幻想卿は海が無いので川魚のはずだから臭みがあるのかと思ったのだけれど、柚子で味付けされてそれを感じさせないぐらい美味しかった。
 次におちょこに注がれた酒を飲んでみる……十八になったばかりでお酒は飲めなかったのだが、甘味と喉越しがスッキリしていてなかなかこれも美味い。
「銘酒月世界は美味しいでしょ? うちの工房、空真醸造で作った餅米のお酒なの。秀太はお酒が飲める方なの?」
 おちょこのお酒を飲み干すと、優曇華が酌をしてくれた。
「ありがとう……本当はお酒が飲めないんだけど、初めて美味しいと思ったよ……こういう時こそ飲まないとな」
「秀太……?」
 何だろう涙が……?
「どうしたんだよ優曇華? お酒か?」
 涙を拭き、不思議そうな顔をする優曇華に酌を返す。
「秀太の波長が少し寂しく感じられる……どうして?」
「俺が寂しい? 何が寂しいんだよ?」
「……それは」
「話の途中で悪いけど……秀太、あなたにはすぐに飲んで貰いたい薬があるの」
 そう言って永琳は紙包みを開き、秀太の前に丸薬を置く。
「やっぱり師匠は薬の実験体のために秀太を!?」
 優曇華の言葉にてゐの呆れたような視線が向く。
「人聞きの悪い事を言わないで……これはスペルカードを抑制する薬よ……これを飲めば、スペルカードの暴走はしなくなるはずよ……今日は精神が不安定になる満月だから飲ませた方が良いと思ったのよ」
 秀太はマジマジと見た後、数粒の丸薬を飲み、とっくりのお酒を一気に飲み干す。
「ここは本当に楽しいな!」
「秀太、本当に大丈夫なの?」
「何がだよ?」
「何か悩みがあるのでは……例えば実は吸血鬼の家系とか、妖怪の血を引いているとか?」
 隣のてゐが酌をしながら質問してくる。
「ん? 俺は普通の人間の家系だよ……というか、あっちの世界では妖怪自体が珍しいよ」
 その後の事はよく覚えていない……ただ、優曇華がずっとこちらの事を気にしていたのは覚えていた。



「新聞屋さん。頼みがあるんだけど……良いかしら?」
 声と共に射命丸文の前に空間の裂け目から現れたのは紫だった。
「なんですかあなたは!? いきなり人の家の中から現れるなんて迷惑にも程があります!?」
「号外を出して欲しいのよ……外から来た人間のイージーシュータじゃなくて、飯井地秀太の記事をね」
「それに関しましてはまだ裏が取れていませんのでまだ記事には……」
「藍、例の物を……」
 空間の隙間から九尾の妖狐、藍が現れる。
「文さん。今回の事件につきましては私が裏を取りました……これがまとめたレポートと証言者の声をレコーダーに録音したものです」
 そう言って藍は無数の文字が欄列した紙束と小型テープレコーダーを文に渡す。
「明日中に号外は出せるかしら?」
「確かにこれは……しかし、なぜこのような事をするのですか? あなた達に何の得があって……」
「霊力や魔力を持たないはずの外の人間がスペルカードを使った……これを見てどのくらいの者が興味を持つのかしら? 楽しみだとは思わない?」
 そう言って紫は藍と共に空間の隙間へと消えていった。

 席に座っていたウサギ達のほとんどの者が眠りこけていた状態だった。まともに座っているのは輝夜、永琳、てゐ、優曇華だけだった。
 そして秀太もテーブルに突っ伏して眠りこけている状態だった。
「秀太、ほら起きて」
 優曇華が何度も秀太の身体を揺さぶるも、全く起きる気配がない。
「優曇華、悪いけど……彼を部屋に連れて行ってくれる?」
 苦笑いする永琳が言う。
「……はい、師匠」
 優曇華が抱き起こそうとした時、秀太の腕が力強く優曇華の手を掴む。
「大丈夫だよ……一人で歩ける」
 そう言うと、ふらふらしながら部屋を出て行く秀太。
 寂しさと不安の波長がより強くなっているように思えた……このまま放っておいたら秀太は……
「師匠、私、秀太を部屋まで送っていきます」
 優曇華が廊下に出ると、秀太の姿は既に居なかった。
 廊下を駆けて竹の間へと急ぐ。なぜだろう? 初めて会った人間なのに……ここまで不安にさせるのは……
 竹の間の付近へと行くと、秀太が部屋へと入っていく姿が見えた。
 いったい何をしているんだろうか? 寂しさや不安の原因を聞いたとしても話してくれるとは思えないし……逆に心の波長を読み取る優曇華を気持ち悪がられるだけかもしれない。
 かといって寂しさと不安でいっぱいになっている秀太をどうしても放っておけない。
 優曇華は少しだけ襖を開け、部屋を覗き込む。そこには暗い部屋で携帯電話を眺める秀太が涙を流している姿が目に見えた。
「秀太!?」
 思わず声を出した優曇華に振り向く秀太。
「優曇華……?」
「その……気になって……酔ってたから!? その……どうしたの? 明かりも点けないで」
 慌てる優曇華は誤魔化すように電気のスイッチを入れる。
「恥ずかしい所を見られたな」
「携帯電話……外の世界の友達の事を考えてたの?」
「ああ……ろくな親や友達はいなかったけどさ……こうして会えなくなると悲しくなるもんだな」
 涙を拭き、答える秀太。
「きっとすぐに戻れるわよ……」
「別にこの世界が嫌いじゃないんだ……でも、この世界を受け入れる事ができない……ここでは何が起こるか分からなくて恐いんだ……」
 秀太の頬から涙が伝わり、雫となって畳をゆっくりと濡らしていく。
「大丈夫……私達がいるよ……私が秀太を守ってあげるから」
 優曇華が秀太に歩む寄ると、両腕で抱き寄せていた。
 不思議な人間……泣き虫な男なのに愛しく思える。
 そのまま秀太はずっと優曇華の胸で泣き続けた……窓から差し込んでくる満月の光が優曇華と秀太を見守るように照らし続けていた。

「起きて秀太!」
「起きろ~」
 二人の少女の声と身体にかかる凄まじい衝撃によって、秀太の眠った意識が無理矢理に覚醒される。
 目を開けると、のしかかっているてゐが顔を近づける。
「……重い」
「やっと起きたわね……てゐもいつまで乗ってると、秀太が起きれないでしょ」
「それじゃあ、秀太にこのまま乗ってれば外に出なくて良い訳ね」
 てゐは目を光らせ、まるで抱き枕かのように秀太を両手と両足で羽交い絞めにする。
「や、やめろ!?」
 てゐが秀太にほお擦りする。
「良い抱き枕ね……このまま寝てしまおうかな」
「てゐ!」
 優曇華がてゐの首襟を掴み、秀太から引き剥がす。
「冗談よ……冗談」
 睨む優曇華にてゐが苦笑いする。
「ふざけてないですぐに仕事に行くわよ……秀太もすぐに着替えて準備して」
「……仕事?」
「働かざる者、喰うべからず……今日から私の仕事を手伝ってもらうわよ」
 優曇華にリュックを背負わされ、連れて来られた場所は人や妖怪達が行き交う村だった。
「へえ~ここが里か」
 茅葺き屋根や瓦屋根の平屋が建ち並び、着物や古風な洋服を着て歩く者達……妖怪を抜きにすればまるで明治時代にタイムスリップしたみたいだ。
「ここでいつも師匠の薬を売ってるの……今回は荷物持ちだけど、今日までに仕事を覚えてもらうわよ」
「喰った分だけ頑張るよ」
 ガッツポーズをする秀太。
「その意気ね」
「そういえば……てゐは?」
「あいつは竹林で迷った人の救済……永遠亭に辿り着ける者は少ないからね」
「だから人里に現れないのか……」
「それじゃあ、ちゃんと見ててね」
「おう」
 優曇華は薬と書かれたのぼりを上げると、声を上げる。
薬の効能、どれだけ薬が効き、安いかを必死にアピールしていた。求聞式では人間を避けているように書かれていたが……優曇華の接客態度からそれは分かったような気がする。本人は普通に対応しているのだろうが、機械的にただ、こなしているだけのように思えた。
 売り歩いている内に数人の妖怪と人間の客が薬を買っていったが、遠くから不審の目を向ける者も少なくはないように思えた。
「次は置き薬を置いているお客さんの所に行くわよ」
「置き薬?」
「置き薬っていうのは私達が家庭に配っている薬箱の事よ……薬を使った分だけ代金と引き換えにする仕組みになっているの」
「外の世界ではあまり聞かないシステムだな」
 優曇華に続き、瓦屋根の家に入る。
「ごめんください……置き薬の補充にきました」
 しばらくすると、一人の老婆が薬箱を持って奥から姿を現す。
「あら、今日の薬屋さんは優曇華ちゃんだけじゃないのね」
「新しく入りました……もしかしたらこの子も回収に来る事もあるので、その時はよろしくお願いしますね」
「どうも秀太です」
 会釈すると、老婆がにっこりと微笑む。お得意さんなのだろうか? この老婆には親しみがある。
「優曇華ちゃん。今日は湿布と風邪薬を使ったわね」
「秀太、リュックを下ろして」
「おう」
 優曇華は薬箱を開け、入念に中身を確認した後、秀太が下ろしたリュックから薬や湿布を取り出して手際よく補充していく。
「湿布と風邪薬で十五文になります」
「はい、これで丁度よね」
 老婆からお金を受け取ると、確認してから布袋に入れる。
「確かに……他に追加したい薬が無ければこれで失礼します」
「そうね……特に無いわね」
「それではこれで失礼します」
「ちょっと待って優曇華ちゃん」
 優曇華が踵を返そうとすると、老婆が引き止める。
「何でしょう?」
「美味しい羊羹があるの……優曇華ちゃん食べていかない?」
「気持ちはありがたいですが……次の仕事があるので……」
 リュックを持ち、再び踵を返す優曇華とは反対に進み、靴を脱いで家にあがる秀太。
「おばあさん。ちょうど甘い物を食べたいと思っていたんだよ」
「良かったわ。一人では大きすぎて食べきれないと思っていたから」
 冗談なのか、本気なのか笑って言う老婆に対して困惑する優曇華。
「ちょっと、秀太……私達には仕事があるのよ!」
「たまには良いだろ……それにお得意さんなら羊羹を食いながら意見を聞くのも悪くはないはずだよ」
 老婆に招かれるまま奥へ行く秀太に優曇華がむっつりとした顔で付いて来る。
「何で私まで……」
 文句を言いながらもテーブルに座る優曇華。
 しばらくして老婆が盆に羊羹とお茶を乗せて運んでくる。
「どうぞ」
 お茶と羊羹が置かれると、じっとそれを見つめる優曇華。
「みずみずしくて美味しそう……やっぱりこの時期は羊羹だよな。いただきます」
 秀太は優曇華にお構いなしにお茶を飲み、羊羹を頬張る。
「口に合うかしら?」
「うまい! 食べてみろよ優曇華……本当に美味しいよ」
 言われ、優曇華がゆっくりと羊羹を口に含む。
「……美味しい」
 と、口を押さえて頬を染める優曇華。
 優曇華の接客程度から想像すると、まともに人間とはこういった交流をした事がないのかもしれない。落ち着かずにどぎまぎしている。
「お口に合って良かったわ……こうして見ると、やっぱり妖怪兎と言っても人と変わらないのね」
 微笑する老婆。
「無愛想に見えて、優しいし……優曇華は俺の命の恩人ですからね」
「無愛想に見えて悪かったわね!」
 なぜか頬を赤く染めてそっぽを向く。喜んでるのか、怒っているのかよく分からない。
 それをなぜか老婆は微笑ましく見ていた。

「で……何であんな行動をとったのか教えてくれる?」
 外に出ると、睨むように迫る優曇華。
「だって優曇華ってさ……里の人間に対してちょっと無愛想だよな……もうちょっと明るく振る舞えば里の人間ともっと仲良くなれるんじゃないか? せっかくこういう仕事をやってるんだからさ」
「別に人間と仲良くなるために薬を売ってる訳じゃないし」
「もうちょっと愛想を良くして接客すれば人間か妖怪の男の子が見てたら惚れるかも」
「好きになってもらいたいとは思わないし」
「残念だな……俺が妖怪の男だったら絶対に惚れてるのに……」
「冗談言わないでよ……」
「でも、本当に可愛いと思うよ」
「ちょっ……なに言ってるのよ!」
 優曇華の頬がトマトのように真っ赤に染まったかと思うと、いきなり秀太を突き飛ばす。
「な、何するんだよ!?」
「し、しばらく休憩!」
 逃げるように駆ける優曇華だったが、子供の泣き声が聞こえて足を止める。
「え~ん! 痛いよぉ!」
 その声ははうずくまる小さな女の子だった。膝を擦りむいたのか、足を押さえてうずくまって泣いている。
「足を擦りむいたのね……ちょっとお姉ちゃんに見せてね」
「ひっ!?」
 優曇華が近づくと、身体を震わせて怯える女の子。
「秀太、リュックを貸して」
「おう」
 優曇華は少女の反応を気にする事なく秀太からリュックを受け取ると、素早く薬箱を取り出す。
「大丈夫……すぐに痛いのが飛んでいくからね」
「……うん」
 その言葉に少し安心したのか、うなずく女の子。
「我慢してね……ちょっとしみるわよ」
 女の子は消毒液がしみる痛みに対して泣きそうになるも、優曇華が手際よくガーゼで傷口を拭き、軟膏を一塗りで終える。
「……えっ?」
 その手当てに十秒もかからなかった。その手際の良さに痛みを感じるヒマも無かったのだろう……唖然とする少女に優曇華は包帯をする。
「できた……足はもう痛まないと思うけど、今度は気をつけて歩いてね」
「……うん」
「さすが永琳の弟子だな……手際が良い」
「こんなの基礎的なことよ……師匠に比べればまだまだ私なんかじゃぜんぜんよ」
 別に威張るでも照れもせずにそう言ってのける。それは凄い事のように思えた。小学校の時に経験があったが、擦り傷の治療に痛みを堪えられずに泣き喚く子供を見た事がある。それに比べ、優曇華は素早く傷の治療をし、子供を泣かせない技量は凄いと思った。
「ちか千佳!」
 母親と思しき女性が駆け寄って来る。
「お母さん。あの兎のお姉ちゃんが千佳の傷を治してくれたの」
 女の子が母親に抱きつき、笑顔で言う。
「どうもありがとうございます」
 こちらに気づき、会釈する母親。
「ちょうど通りかかったので、手当てさせてもらいました」
「あっ……お代の方は?」
 財布を取り出そうとする母親に優曇華は慌てて手を左右に振る。
「いいえ、いいんです!? これは私達が勝手にやった事ですから」
 母親はもう一度、入念に会釈すると、千佳と手を繋いで歩く。
「兎のお姉ちゃん。ありがとね」
 手を振る千佳に頬を赤める優曇華。
 その優曇華の反応に千佳は首を傾げる。
「そういう時は手を振って笑うと良いんだ」
「……どういたしまして」
 恥ずかしながらも、優曇華が笑顔で手を振ると、千佳は満面な笑顔を返した。
「里の人間にこうやって愛想をふりまくのも、悪くはない事だろ?」
「……そうね」
 そう言うと、優曇華は満足そうに見えなくなっていく千佳を見送った。



 何なのこの気持ち? ドキドキが止まらない……
 永遠亭に着いてからはまともに食事が喉に通らなかった。まさか人間に恋をしてしまったとでも言うのだろうか? 月に居た頃でもまともに恋をした事がなかったはずなのに……
「その事……優曇華にも話してないんでしょ?」
「……別に隠している訳じゃないんだけど……恥ずかしいんだよな……」
 廊下を歩いている秀太と永琳が通り、咄嗟に柱に隠れる優曇華。
「師匠と秀太が一緒に……?」
 秀太と永琳が浴室へ入っていくのが見えた。
 永遠亭で住んでいる者がほとんどが女なので……女湯しかないのだが……なぜ一緒に浴室へ行くのだろうか?
 脱衣所をこっそり覗き込むが、暖簾の隙間からではロッカーが邪魔で見る事ができない。
「なんか俺の小さいし、恥ずかしいな」
「恥ずかしがらないで……こんなに良い身体をしてるのに」
 忍び足でゆっくりと近づく優曇華だったが、二人は既に服を脱ぎ終わったのか、風呂場の引戸が閉まる音が聞えた。
「師匠……秀太……何を考えて……」
優曇華が引戸を開けて潜入すると、隠れながらギリギリまで接近する。風呂場は広く、吹き抜けの露天風呂になっている。周囲には岩が積んであるので、隠れる場所はいくらでもある。
湯気で顔しか見えないが、動きで永琳が秀太の背中を洗っているのが分かる。
 本当に師匠と秀太は何を考えているのだろうか……よりによって大の男と女が背中の流し合いだなんて……
 永琳と秀太のすぐ隣の岩陰からひょっこりと顔を出す黒髪のうさ耳……あれは間違いなくてゐだ。どうして覗き見ているのかは知らないが、何かとんでもないものを見たかのよう動揺している。てゐの周りに湯気が少ないせいか、状況がよく分かるのだろう。
 こんな状況を見ていれば動揺するのは当たり前だ……ましては秀太は男で、永琳は女なのだ。こんな事が許されて良いはずがない。
「次は前……」
「ええっ!?」
 戸惑う秀太に構わず永琳は前に回す。
「ほら、前向いて」
「ちょっ!?」
 秀太をスポンジでこすっていると思われる永琳の動きが少しいやらしい感じがして、余計に腹が立つ。しかも、秀太は抵抗もせずに為すがままにされている。
「気持ち良い?」
「ど、どこを洗ってるんだ!?」
「よく揉めば大きくなるかなと思って」
「勘弁してくれ!」
 駄目だ……もう見てられない……師匠がよりによってナニをいじり回すなんて……ここは女ばかりだから確かに男のアレには興味あるけど……いや、そうじゃなくて!
 もういや!
 頬を真っ赤に染める優曇華は逃げるようにして風呂場を後にした。

「こ、これはとんでもない事を知ってしまったわ!?」
 部屋に戻った因幡てゐがなぜか顔を青ざめる。
「いったい何を知ってしまったのかしら?」
 その声と共に空間の切れ目から現れたのは紫だった。
「ゆ、紫!?」
「良い情報が得られたという事かしら?」
「あなたの望み通りに秀太の重大な秘密が得られたわよ……望みの最新機種のIPODをちょうだい」
「情報が先よ……私はあなたを信用してる訳じゃないわ」
 てゐは舌打ちをしつつ、秀太の秘密を紫に耳打ちをする。
「……という訳よ」
「ふーん。で?」
「で? って何よ! それが情報よ!」
「秘密でも何でもないわ……私でも知ってる情報が良い情報と言えるかしら?」
「何よ! 身体を張って仕入れた情報なのよ」
「私が知りたいのは血縁関係だと言ったはずよ」
「只の人間よ……そんなの調べて何が面白いっていうの?」
 IPODを取ろうとするてゐを避け、紫は溜息をつく。
「良い情報が得られるまでお預けよ」
 紫は空間に隙間を作ると、そのまま姿を消してしまう。
「残念ね……幻想卿中を騒がせる情報だと思ったのに……あなたがいらないなら私が有効活用させてもらうわ」
 不適な笑いを浮かべるてゐだったのだが……

 秀太の情報を流したいてゐは迷いの竹林に文を呼び寄せていた。
「情報にならない? どうして?」
「あなたが言うほとんどがウソですからね……何を信じろと言うのですか?」
「今回は本当に本当よ」
「じゃあ、どういった情報なんですか?」
「教えるから情報料をちょうだい」
 手を出すてゐに訝しげに睨む文。
「今回は騙されませんよ! 情報の方が先です」
「……どいつもこいつも」
 文句を言いながらも、文の耳元にそっと秀太の秘密を喋るてゐ。
「はははっ!? そんな馬鹿な……どう見ても彼の容姿から考えてそれはありえません」
 信じていないのか、笑う文。
「本当の情報よ!」
「これ以上、あなたに付き合っているヒマは無いのですよ……それが本当の話なら裏が取れそうな目撃者か本人を連れて来てください」
 そう言って飛んでいく文。
「本当なんだってば!」
 叫ぶように言うてゐの頭に何かが当たって、地面に落ちたのは文々新聞だった。
「っ!? なに? 博麗神社で乱闘……唯一、妖怪に対抗できる外の人間か!? 容疑者は現在、永遠亭にて滞在中……これはある意味、情報を売るチャンスなのかもしれないわね」



 いつものように里で優曇華と薬売りをするはずだったのだが……
「私の半径三メートル以内に近づかないでね!」
 なぜか機嫌が悪い優曇華にどぎまぎする秀太。
「何があったんだよ? 何でそんなに機嫌が悪いんだ? そんなんじゃ客も来なくなっちまうよ」
「私は、あんたみたいな自分勝手な人間が嫌いなだけ!」
「羊羹をご馳走になったのが、そんなにいけない事なのか?」
「あれがかわいい女の子だったらいったい何を要求するのかしら?」
 そう言って歩くスピードを上げる優曇華。
「何を言ってんだよ優曇華!?」
 優曇華を追いかけようとする秀太に何者かの手が肩を掴み、路地裏へと引き込む。
 振り向きざまに咄嗟に構える秀太。
「誰~だ?」
 それがてゐの顔だと分かり、安堵の溜息をつく秀太。
「脅かすなよ……また人喰い妖怪かと思っただろ」
「あんたに会いたいという女の子がいるのよ……会ってくれる?」
「誰だよ? 妖怪だったり、幽々子だったりしないだろうな?」
「ちゃんとした人間よ。しかも可愛い女の子……名前は確か……」
 どうも胡散臭さを感じずにはいられない。てゐは人や妖怪を平気で騙す妖怪兎だ……油断して騙されればどんな酷い目に合うか分かったものじゃない。
「今は仕事中なんだ……後にしてくれ」
 そう言って踵を返す秀太。
「あーあ。かわいそうにね……千佳ちゃんっていう小さな女の子がお礼をしたいって言ってたのに……」
「千佳って……優曇華が助けてあげた女の子」
 振り向く秀太に満面な笑みを浮かべるてゐ。
「そうよ……あなたに話があるみたい」
「じゃあ、優曇華を呼んで来ないと」
「あ……あなただけよ……こっちに来て」
 てゐに手を引かれ、連れて行かれた場所は里の外の草原だった。
「ここに本当に千佳ちゃんがいるのか?」
 見回すが、遠くにさえ人のシルエットすら見えない。
「恥ずかしがって隠れているのよ……行ってあげれば」
 その声に反応して、茂みにガサガサと何かが動く音がする。
「千佳ちゃん?」
 秀太が茂みの前に足を踏み入れた瞬間、地面の底が一瞬にして抜けていた。
 背中を打つようにして穴にはまる秀太にチルノ、リグル、ミスティア、ルーミアが見下ろす。
「あたいってば最強ね」
「お前は何もやってないだろチルノ」
 リグルが呆れたように言う。
「こんなせこい手は使いたくはなかったけど……私達をコケにしたお礼はちゃんとしたいからね」
 翼を羽ばたかせ、見下ろすミスティア。
「それに人間を食べるチャンスは滅多にないのよー」
「悪く思わないでね」
 見下ろすてゐがウインクする。
「これが報酬よ」
 ミスティアがてゐにお金が入ったと思われる封筒を渡す。
「毎度あり~」
「じゃあ……千佳はお前達が!?」
「里の人間に手を出すほど愚かじゃないな……里で私達はたまたま千佳っていう女の子のやり取りを見てただけだ」
 そう言ってリグルが一匹の蜘蛛を秀太の首へと飛ばす。
「おいてゐ! 俺がどうなっても良いって言うのかよ!」
「あんたが食べられようが、死のうが、私には関係ないわ」
「くそ!?」
 睨むように見る秀太を無視し、てゐは封筒に入った通貨を嬉しそうに数えていた。
 プスリと何かが刺さる音と共に首筋に激痛が走る。リグルの飛ばした蜘蛛が首を刺したのだろう……毒のせいか……意識が……
 秀太の意識が闇へと閉ざされた。

 里で居なくなった秀太に気づき、きょろきょろ見回す優曇華。
「秀太……仕事をほったらかしにして何処へ行ったのよ?」
「兎のお姉ちゃん」
 駆けてきたのは足の擦り傷の手当てをした千佳の姿だった。
「千佳ちゃん……傷の方は大丈夫?」
「兎のお姉ちゃんのおかげでもう痛くないよ」
「また転ばないようにね」
「お姉ちゃんにこれあげる」
 千佳に渡されたのは赤い芭蕉の花だった。そして偶然かその花の異称は……優曇華。
「ありがとう」
「一緒に居たお兄ちゃんは?」
「さっきまで一緒に居たんだけど……はぐれちゃったの」
「じゃあ、千佳が一緒に探してあげる……なんだか凄く寂しそうだもん」
 確かにそうなのかもしれない……秀太が居ないだけにこんなにも寂しく感じる。彼のおかげで、人間とも接する事ができた……もし、秀太がいなかったら……
「そうね……一緒に探そっか」
 そう言って優曇華は千佳に笑顔を向けた。

『じゃあ、このまま脱がしちゃおう』
 朦朧とする意識の中、いきいきとした表情のてゐが着物の脱がせようとする。
『ちょっとちょっと!? 何で脱がせるの!?』
『丁度良いわよ……どうせ焼肉するんだから』
『美味しそうな人間ね』
 よだれをすするルーミアの声。
『何であたいの子分を食べるのよ!』
『諦めろよチルノ。こいつは人間……俺達の言う事なんて聞きやしないよ……久しぶりの飯にありつけるだけ、ありがたいと思った方が良い』
『こいつ……上も下もツルペタじゃないの!?』
 何をそんなに驚いているのか、声を上げてこちらを見下ろすミスティア。
『なに言ってんだよみすちー。男だったら上も下もツルペタだろ? ……下も!?』
 なぜかこちらを見て驚愕の表情をするチルノ達。
『ルーミア、いくらお腹が空いてるからって……男のナニを味見することないじゃないの』
 ミスティアの声。
『えー、知らないよ』
『じゃあ……女ああああっ!!?』
 はもるように声を上げるチルノ達。
『そうよ……こいつは女なの』
 そう言っててゐは元結を解き、満面な笑みをこちらに向けた。
 完全に意識を取り戻した時には秀太は金網の上に素っ裸で寝かされていた事に気づく。
 辺りは夜になっているせいか、何も見えない。いや、夜よりも暗い闇だ。明るく照らされた赤提灯の屋台である程度の周囲しか見えない。
「気がついたか? そろそろ蜘蛛の毒が切れる頃だからな」
 覗き込むリグルに立ち上がろうとするも、両手と両足が金網にロープでくくり付けられているせいか、立ち上がる事もできない。
「てめえらは変態か? 俺をどうしようってんだ?」
「だいたいさ……お前なんで男の格好をしてるのかねぇ……しかも、名前が秀太で、自分の事を俺とか使う女がいるとはな」
「お前に言われたかねえよ!」
「あん? リグルキックかましたろか!」
 飛びかかろうとするリグルにミスティアが押さえる。
「好きなだけ言わせておけば良いじゃない……炭火でこいつはすぐに踊り焼きよ」
「俺を焼肉するつもりかよ!?」
 秀太が何度も身をよじらせるも、ロープは思った以上に頑丈でビクともしない。
「しかも、そのロープは耐火性が強くて頑丈なの……こんがり焼かれるまで暴れると良いわ」
「こんな事して……優曇華が黙っちゃいない!」
「残念だけど、助けも皆無だな……今は夜、それに加えてルーミアの闇で周囲を暗くしてるからな」
「どうせならこんな時だけじゃなくて……移動する時も暗くさせてよねー」
「見えなくなるからこういう時にだけよ」
「えー」
「じゃあ、すぐに火を点けようか」
 ポケットからマッチを取り出すリグル。
「その前に味付けをしないとね」
 ミスティアが屋台の棚から取り出したのは刷毛の入った缶だった。
「味付けって……まさか俺にそれを塗りたくる気じゃないだろうな!?」
「私のこの秘伝のタレがあってこその料理なのよ~♪」
 歌うような調子で言うみすちーは秀太に近づくと、肩から小さな膨らみのある胸へとなぞるように刷毛でタレを塗りたくり始める。
「うああああっ!?」
 ミスティアにタレを塗られ、仰け反る秀太にチルノが顔を赤める。
「……エロいよみすちー」
「ううっ……こんな事されるぐらいだったら……普通に焼かれた方がマシだよ!」
「秘伝のタレは人間を美味しく~♪ 気持ち良く~♪」
 ミスティアは腕を止める事なく、ぴちゃりぴちゃりと音を立てながら腹から股間へと刷毛を楽しそうに往復させる。
「はうううっ!? やめろおおっ!?」
 ぬるりとした刷毛の感触で苦悶の表情で激しく身をよじらせる秀太。
「なかなか女らしく鳴くようになったじゃない……でもね……私が大喰らいの幽霊にされた事に比べれば序の口なのよ!」
「みすちーの奴……苦労してるんだな」
 苦笑いするリグル。
「やめろ……マジで殺すぞ!」
 怒気を含む声で言うものの、顔は苦悶の表情になってしまう。
「無駄口が叩けるって事はまだ味付けが薄いのかしら?」
 今度は股から足の裏へとかけて塗りたくられ、うごめく秀太。
「そのへんにしとけよ……」
 リグルは肩を叩くも、睨むミスティアに退く。ミスティアの怨みの方向は幽々子の当てつけへと変わっていた。
「次は後ろ」
 秀太を裏返しにすると、刷毛によって項から背中をぬるぬるのタレに蹂躙されていく。
「はうっ!? はうううっ!?」
 喘ぎ声を上げる秀太の息遣いが徐々に荒くなっていく。
「良いお尻……揉みがいがありそうね」
「やめて……くれ!?」
 ミスティアはそのまま缶に入ったタレを秀太の尻にぶちまけると、両手で激しく揉み始める。
「はうっ!? はうっ!? はううっ!?」
「あなたには分かる? 幽々子に料理されて喰われそうになった私の気持ちが? こんなんじゃないのよ! 私は命乞いをして馬鹿幽霊の足を舐めて見逃してもらった……このみじめな気持ちが!!」
「みすちー。お腹空いたよー。そろそろ焼いて食べようよ」
「そ、そうね」
 荒い息遣いを上げる秀太。
「はあっ……後で……はあっ……焼き鳥に……してやる!」
「焼かれるのはあなただけどね」
「こいつ……焼いて喰うのか? 止めようよ」
 不安そうに言うチルノ。
「なによ今さら……そっかチルノだと熱いから踊り焼きより踊り喰いの方が良いの? そっちの方がもっとエロいと思うんだけどねぇ」
「あたいはよく分からないけど……死ぬっていうのはすごく恐い事なんだ……だからあたいの子分にする」
「外の人間は唯一、食べて良い人間なのよ……これを逃して何を食べれば良いの? 妖怪だって何も食べなければ死ぬわ」
「という訳よチルノ……そろそろ火を点けさせて……って、あれ? 火が点かない?」
 リグルがマッチを擦るも、湿気ているのか、火花すら出ない。
 それでも、このままではいずれ炭に火が点き、焼肉される……こんな時にフランドール先生がいれば、スペルカードが使えるのだが……
「何か特殊な能力があると思ったのに……本当に只の人間じゃないの……このままじゃ本当に食べられちゃう」
「どうしたの?」
 小声でぶつぶつ言うてゐにルーミアが歩み寄る。
「ルーミアちゃん。提灯の光が眩しいの……私の前に立って暗くしてくれる」
「お安いご用なのー」
 てゐの言われるままルーミアが立ち、周囲を暗くする。
「少し暗いけど……しかたないわね」
 てゐは金網に乗り、秀太が縛られている腕を手探りで探す。
「てゐ!? お前!?」
『しっ……静かに……あんたを助けてあげる』
 てゐは秀太の腕を見つけると、ロープに歯を当て、噛み切り始める。
「いっ!? 歯が当たって!?」
「だはら!? しずはにって!?」
 ロープに歯を当てながら喋るてゐ。
「よし……火が点いた!」
 リグルが火の点いたマッチを炭に投下した瞬間、てゐによって両手のロープが噛み切られる。
「くうっ!?」
 だが、足は縛られたままで、既に炎が金網へと吹き上がる。
「狂い踊れ~♪ 狂い踊れ~♪ 踊り焼き~♪……って、えっ? 逃げるじゃないの!?」
 てゐによって腕の拘束が解かれ、足のロープを何とか自力で抜け出し、そのまま金網を降りて全力で駆ける。
「秀太君! 無事?」
 空から聞き覚えのある声に見上げると、満月を背に飛ぶフランドールの姿が見えた。
「今まで何処へ行ってたんだよ! 俺がどんな目にあったか……」
「秀太君。話は後だよ……あいつらが追いかけてきてる」
 振り向くと、追いかけて来るチルノ達が見える。
 股下からぬるりとした雫が地面に垂れ、顔をしかめる秀太。
「あいつらをぶちのめす事ができたら……気持ち良いだろうな」
 どうする? フランドールになればそれも可能かもしれない……だが、フランドールになればまた……
 その時、脳裏に優曇華の顔が思い浮かぶ。
「秀太君……新しいスペルカードだよ」
 投げ渡されたカードをキャッチし、それを掲げる秀太。
「心符! マリオネットハート!」
 紅い光と共に秀太の前に現れたのは優曇華の姿だった。
「えっ? ここどこ?」
「優曇華、振り向かずに落ちついて聞いてくれ……訳あってあいつらに喰われそうになってる……助けてくれると嬉しい」
「その声、秀太?……いつものあの四人組に追われてるのね……そしててゐに騙された」
「分かるのか?」
「近くなら波長で分かるのよ……ほら、あの茂みに隠れてる……あいつ悪い事するとすぐにあーやって隠れるから」
 優曇華が指差すと、茂みからひょっこりとてゐと思しきうさ耳が現れる。
「そいつはあたいの子分よ!」
「焼肉は逃さない~♪」
 飛んで来るチルノ達が一斉にスペルカードを掲げる。
「良いわ!……まとめて相手にしてあげる!」
「これは!?」
 秀太のスペルカードが紅い光を帯びる。
「幻惑! クラウンヴィジョン!」
 スペルカードを掲げると、優曇華の赤い眼からリング状の光線が連続して発生してチルノ達へと向かう。
「うきー! あたい達のスペルカードの発動が遅いのは何でよ!?」
「そーなのかー」
 優曇華が放ったリング光線に巻き込まれ、チルノ達が無残にも森の彼方へと飛ばされていた。
「秀太……怪我は……なっ!? 下が無い!?」
 優曇華が振り向くと、その姿に青ざめて膝を落とす。
「まあ、言ってなかったのも悪いとは思うけど……実は俺、女なんだよ」
「じゃあ……師匠がナニを弄ってたあれは……? 大きくなるって?」
「あーあ風呂場を見てたのか……あれは永琳が胸を揉んでたんだ」
「……揉んだら大きくなるって……胸の事?」
「女なんだから……普通に考えてそうだろ」
 頬を染める秀太。
「うふ。うふ。うふふふふふ……初恋って何かしら? ジェラシーって何かしら?」
「う、うどんげ!?」
 優曇華の狂気の赤い瞳が何処か遠くを見つめるように不適な笑いを浮かべる。
「全ては……あなたが悪いのよてゐ!!」
 忍び足で逃げようとしたてゐが、ビクリと身体を震わせる。
「私は被害者よ……無理矢理に手伝わされたのよぉ……」
 涙目で訴えるてゐだったが、優曇華の狂気の瞳にはそれは映らなかった。
「問答無用! 幻惑! クラウンヴィジョン!」
 満月の夜にてゐの悲痛な叫びが木霊する。





あとがきのようなもの


‐WARNING‐

この同人誌はシリアス五十%、萌え三十%、コメディ&パロディニ十%の成分を含んだ程度の小説です。なお、キャラ崩壊の可能性および、ライトノベル的なあら、あら、うふふふふな展開が予想されます。苦手な方はすぐにしっぽ漬ブースから退避し、けーねに無かった事にしてもらってください。あと、立ち読みする時は隣のブースに迷惑をかけない程度の能力で、読みやがってください。

……………………………………………………………
 言うの遅えよ!!
 と思う方はたぶんいないでしょう……うん、いないはず。



 盛りあがってまいりました(?)
 この小説は東方スキーな自分がニコニコ動画の幻想入りに影響を受けて勢いで書いたものではありません……たぶん(汗)とりあえず人気が出れば続編を出さなかったり出したりと……どっちだよ(汗)
 最後に自分よがりな小説にならないように努力しますので、[sippoduke@yahoo.co.jp]に感想などありましたらよろしくお願いします。

 それではまた会う日まで尻尾うにゅう~



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